日本人の映画作品がアメリカ・アカデミー賞を受賞したというニュースが流れている.日本人が海外で評価されるのは,同じ日本人として嬉しいことだ。
でも,今回はどうも素直に喜べない。 オリンピックで北島康介選手が金メダルを取ったというと,心から嬉しくなるが,どうも「アメリカ」が引っかかる。
思えば,昨年の晩秋に起こった金融崩壊,オバマ大統領の誕生,クリントン国務長官の来日,石川遼のアメリカ・ゴルフツアーの初戦,ワールド・ベースボール・クラッシックと巨人軍の練習戦でのNHKのはしゃぎよう,アメリカ・アカデミー賞受賞の手放しの報道,それに麻生首相がいそいそと「最初に呼ばれた」と1時間40分の首脳会議にワシントンまで出かけたこと・・・なにかイヤだ。
日本は2000年の歴史と伝統を持つ,誇り高き国家である。 風土と文化レベル,科学や工業の発達,社会を構成する国民の平均レベル・・・なにをとってもアメリカに劣るところはない.
アメリカが日本より優れているところと言ったら,資源を大量に使うこと,借金をしてものを買うこと,働かない人が偉そうにしていること,粗野なこと,歴史が無いこと,軍隊が強いこと・・・である.
そんなことでアメリカを尊敬しているのか?
国際化とはなにも世界の人の頭を下げることではない.世界の人と同じことをしなければならないことでもない.
経済のグローバリゼーションとは金融などが国際化するに合わせて,日本の金融を守ることであり,国際化の波に飲み込まれることではない.
日本という国が,何も考えない,文化を持たない,家畜のような存在になってしまったようで悲しい.立派な映画はアメリカに評価されなくても立派だ。
クリントン国務長官は知っていても日本の外務大臣は知らない.オバマ大統領が「グリーン・ニューディール」というとその政策の中身に新鮮みがなく,単なる失業対策なのに,日本の評論家は「アメリカがやり始めた」とこれも大はしゃぎだ。
日本はアメリカの州ではない.アメリカの選挙権もなければ,政策を変えることは出来ない.日本はアメリカの属国ではない.アメリカの命令を聞かなければならないと言うこともない.
これはどういうことだろうか?
これを書いているときにも,NHKはオバマ大統領が議会で始めての演説をしているのをタップリと時間をかけて報道している。その次には不祥事が起きた日本の国技,相撲の報道だ。
私は日本に生まれ,日本に住んでいる。そしてこれからも日本の国土とともにいる。アメリカを憎むわけではないが,私にとっては日本の方が大切だ.
この頃,私の研究する環境の分野では,どう見ても,日本の将来(孫)より,外国の孫を心配している人が多い.ひどい時には自分の孫よりホッキョクグマのマゴが可愛いというトンチンカンな解説者に会う。
いったい,日本人というのはどうなったのだろうか?
私は今,日本の伝統的な麻の繊維や製品のシンポジウムからの帰途にある.日本にこれほど素晴らしい文化と伝統があるのに,お金だけが目に入る東京の文化というものが遠くに感じられる。
シャワーのようにアメリカ崇拝のテレビを見ていて,日本人の誇りを保つのはとても大変だ.まずはNHKを見ないことだが,それに加えてできるだけ日本の伝統的なものに接することだろう.そして「なんでもアメリカ」という人から距離を置くようにすれば,少しずつ日本人としての自分を取り戻すことができる.
(平成21年2月25日 執筆)