今から約80年前,1920年といえば祖父の時代だが,その頃の日本人の平均寿命は43歳ぐらいだった.

今、2008年の平均寿命は約80歳.その差はおよそ40歳にもなる.80年経つと寿命が40年延びるということは,1年生きても,半年は平均寿命が延びるから,半年しか歳をとらないことになる.

なんと素晴らしいことか!なんと素晴らしい時代に生きたことか!

でも,副作用はあった.1940年代には戦争、1960年には水俣病は四日市ぜんそく,ほぼ1970年には石油ショック、1990年にはバブル崩壊・・・と続いた.

寿命が40歳延びる。その代わりに,公害,石油ショック,バブル崩壊があるけれど,どっちをとる?と聞かれれば,私は少しのショックがあっても寿命が長い方を選ばしてくださいと答えるだろう.

科学技術は良いところも,悪い面もある.シンポには副作用もあるが,それは仕方がない。人間の知恵のすべてで発展してきた。バカなこともあり,アホなこともあったけれど、それ全部で人間だ.

私は今、環境もよいと思っているが、心配する人もいる.「科学技術は悪いことだけをした」と言う人もいる。江戸時代にかえった方がよいと主張する方もいる。

でも,私は今がよい.環境が心配なら,それを片付けたらよいし、今は心の貧弱な時代だから,これから「愛用品の五原則」,「愛する人とのコーヒー」を楽しめばよい.すべては人間の知恵で片付く。

平安時代にテレビの害を心配しても仕方がない.人間の知恵はつぎつぎとでて,これが最後と言うことはない.1000年前も「これで終わり」と言っていたし、100年前は「発明発見はすべて終わった」とアメリカ特許庁長官が宣言した。

人間は他愛もないものである.いつも今が一番良いいと思って安心する。1000年後には「あんなひどい生活をしていたのね」と言われるのに,それで人間は良いのだ。

あまり心配はいらない.温暖化も環境も,そして人生も.

私はひどく落ち込んでいる学生に言う。「大丈夫だよ。街を歩いてごらん。行き倒れしている人はいない。こんなに人が多いのに一人もいない.だから君も大丈夫だよ。」

学生は少し気が楽になったような顔をして教授室を出る。そして,一週間後には彼の明るい声が研究室に響く。

(平成201228日 執筆)