ジュネーブに本拠がある世界気象気候(WMO)は2008年12月16日,1年間の世界の気象動向についてプレス・リリースをした.
主文では,3つのことが指摘されている.
1) 2008年の世界の平均気温は1850年以来,10番目の暖かさになった.
2) 夏期の北極の氷は衛星で観測が開始された1979年以来,2番目の面積となった(昨年より増えた).
3) その他,地球の多くの場所で日照りや雪害などが見られた.
主たる報告内容は以上であり,夏期の北極の氷は前年の2007年に比較して増大した.また,世界の各地の気象について詳細な報告があり,
1) 南米では特に南部で寒冷化が進み,アルゼンチンでは-6℃を記録し,トルコや中国でも記録破りの低温が観測された.
2) 北極の氷は2007年に比較して増大したが,厚みが薄くなったので氷の量は最小になった(データは示されていない).
などである.
なお,日本に流れたニュースでは,
「世界気象機関(WMO)は16日、北極地域周辺の氷の量が観測史上最小の規模に縮小したと発表した。また、2008年の世界の平均気温は14.3度と21世紀に入って最も低かったものの、温暖化の傾向は変わらないとしている。」
となっているが,長いレポートの中で,なぜ,主文にはないところを大見出し(「北極の氷、観測史上最小規模に縮小=世界気象機関})にした理由は不明である.
詳細なレポートは世界の異常気候が羅列してあり,その中からある意図を持って情報を取り出すのは,情報の伝達としては問題があると考えられる.せめて「主文の報告内容」を見出しにするべきであろう.
なお,北極海の氷は人工衛星で測定するので,1979年以後のデータしかないが,アラスカ国際北極圏センターの報告によると.下のグラフのように北極の気温は1940年頃,最高になり,1979年は最低に近い.
従って,1979年以来の観測値と比較すると,常に「史上最低」に近くなるが,地球規模の議論をするのに,1979年からのデータで「観測史上」という表現は望ましくない.,
(平成20年12月17日 執筆)