昨年,2007年8月16日,独立行政法人海洋研究開発機構と同じく独立行政法人宇宙航空研究開発機構は,以下のプレスリリースを行った.

「北極海における海氷面積が,8月15日,観測史上,最小となったことを確認した」

二独立法人は次のグラフを観測データとして公表した.

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ところが,この発表には公正な取引を定める公正取引精神について,二つの問題点があることがわかった.

一つは,「観測史上,最小」という表現が著しく不適切だったことで,測定は1978年からはじまったもので,わずか27年しか経過していないのにもかかわらず「史上」という用語を使用した.

さらに,アラスカにあるアメリカ国際北極圏センター(IARC)は約100年間にわたる北極の氷の変化を発表しているが,データによると1978年は特に寒冷期に当たっており,観測期間が不適切であることが明らかになった.

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すなわちアメリカ国際北極圏センターによると,20世紀では1940年頃がもっとも北極の気温が高く,二法人が測定した1978年以後は寒冷からの気温回復期に当たっており,通常の科学的整理としては「気温上昇期には氷の面積が減少する」というこれまでの観測と同様の結果を得たに過ぎなかった.

また,二法人が示したグラフについても専門家は「グラフの縦軸を500万平方キロメートル付近から採り、氷の面積がほぼゼロに近づいたような印象を与え、誠実みがないと言われても仕方がないだろう」とコメントしている。

データを発表した二法人はいずれも膨大な研究費を税金でまかなっており、競争的研究資金の目的で、自らの研究費獲得のために都合のよいデータを加工して示し、公正な競争を阻害した可能性が指摘されている。

(平成20127日 執筆)