前回まで普通には財産としては意識されていない,「フジヤマ方式」「花のパリ方式」「アリストテレス方式」について話をしてきた.
これらはすべて心や知恵の財産である。そして,なんと言っても極めつけが「優しいお母さん方式」だ。
人は元気で張り切っている時にはお金は要らない。要らないというよりキャッシュフローがプラスなのである。生活に使うより収入が多ければお金は要らない。
でも,体の調子が悪くなると財産はいる.といっても、芸術も文化もさして関係ないこともある.「俺には「美、芸、智」のいずれも無関係だ、むさ苦しく、取り柄もなく、勉強もできなかった」とぼやく人もいるだろう。
それでも大丈夫だ。奥の手がある.
「優しいお母さん」は人類の宝だ。小学校の頃,運動会の時には愛情溢れた美味しいお弁当を作ってくれた。毎日、忘れ物をしないように気を配ってくれた。病気で熱を出した時には優しくさすってくれた。
どれもこれも自分の人生の中でどんな宝物よりも輝いている。だから、俺が立派になったらきっとお母さんを楽にさせる! 何でもしてやりたいと決意する。
そんな大きな財産というのはあるだろうか?
お母さんの心は”dedication”、つまり「献身」だ。自分のことを顧みず子供の幸福を願う。いったん、子供に生命の危機が訪れればお母さんは身代わりになろうとする。何も求めない行為、それが最大の貯金である。
自分が元気な時、自分が仕事ができる時、とにかく自分の損得を考えない。ただひたすら他人に献身する。もし自分が生涯にわたってそれができれば財産は要らないだろう。それが最大の年金になるはずだ。
そして、人間の感謝の心には賞味期限は無い。むしろ時間が経つと気持ちは高ぶり、感謝が感謝を生む。もともと、お金とは自分が社会にサービスをした分だけいただき、それで社会からサービスを受けるシステムを動かすものである。そしてサービスでもっとも高いのが「献身」である。
日常的に献身することは簡単だ。別に「社会運動」の団体に入らなくてもできる。むしろ、個人的に献身した方が財産になる。
人から頼まれたら断らない。これがまず第一である。この重たい物を持って行ってください・・ハイ!、ちょっとそこまで届けてください・・ハイ!、この書類を書いてください・・ハイ!、職を探してくれませんか・・私の力ではたぶんお役に立たないと思いますが、頑張ってみます、少し体の調子が悪いのですが・・ハイ!私が代わりにやります。
ともかく人が嫌がることを気軽に引き受ける。そして損得なしに頑張る。もともと献身だから「これをしたら得になるか損になるか」などとはまったく考えない。
それをしても自分が大きく傷を負わなければ人のために献身する。朝、七時に起きるところ六時に起きても不満はない、人と一緒の時には自分が重たい荷物を持つ、献身とはそんな小さなことの集積だ。
会社で一生懸命やっても他人が出世すればそれはそれで喜ぶ、人間、運不運だ。そんな時には不運と思って諦める。お酒の好きな人はそれで流せばよい。明日は明日の風が吹く。
損得、自分と他人をまったく考えない。ただ目前のことに全力を注ぐ。それに悟れば「献身」は可能である。
お金儲けとは「相手が自分にお金をくれる」のだから、相手が自分に感謝してくれなければならない。一番、深く感謝するのは「優しいお母さん方式」だ。
最後に,実学の大家、貝原益軒先生にお出まし頂き、お金を管理する大原則を教えて貰えば完璧である。益軒、曰わく・・・
「貪(むさぼる)、杏(けち)、費(むだつかい)を避けよ」