2008年が開けて間もなく、日本のリサイクルを象徴するものの一つ「リサイクル紙」に大きな偽装があったことが明らかになった。日本製紙など大手4社と、つづく3社がいずれも「リサイクル紙」と偽ってほとんど新品のパルプを使った紙を製造していた。

 

 日本製紙の社長は国民と顧客を騙していたことを謝罪して辞任したが、他の会社の社長は留任している。国の方では環境大臣がまるで人ごとのように製紙会社を叱った。

 

 しかし、この事件で責任を取るべきなのは、環境大臣と経産省の担当課長であり、あえて言えば製紙会社は「見通しの悪い被害者」に過ぎない。そして第二の責任者といえばマスメディアと国民だろう。

 

 なぜ、製紙会社は「見通しの悪い被害者」であり、なぜ被害者が辞任したか、それを解説しておきたい。

 

 もともと、日本の紙の「製造と使用」はおよそ環境とはかけ離れている。日本は先進国の中でもトップ・スリーの森林大国で、国土面積の3分の2が森林だ。日本に匹敵する森林を持つ国は、フィンランドとスウェーデンしかない。

 

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 主要な先進国(アメリカ、フランス、ドイツ)などはちょうど15位程度で森林面積比は30%を少し超える程度である。またこの表には乗っていないが、イギリスは12%、オーストラリアは21%と森林が少ない。

 

 日本とほぼ同じ森林面積率をもつフィンランドとスウェーデンは森林の利用率が90%なのに対して、同じ先進国で平均所得もそれほど違わない日本は50%しか森林を利用していない。日本より森林利用率の低いOECDの国は韓国とメキシコのたった2ヵ国である。

 

 森林の利用というのは人間にとっては太陽電池とか風力発電のように「太陽の光を利用して人間の生活に役立てる」というものだから、できるだけ効率的に森林を使うのが良い。

 

 ところが日本では奇妙な環境運動が進んで、森林は「使わない方良い」、でも太陽電池は「使った方が良い」ということになった。まるで「電気を消して温暖化を止めよう」と言いながら、「温暖化には電気自動車がよい」と似ている。

 

 問題は「森林が破壊するようなことがないように注意して使う」ということでこれは明治以来、日本もまた先進各国ともに気を配ってきた。そして、森林には「天然林と自然林」があり、樹木の種類としては「針葉樹と広葉樹」があるが、それぞれ適した用途に使われている。

 

 天然林のように人間が手を下さなければ、それなりに森の秩序は保たれるが、原生林のようになる。そこで森林の約半分程度を計画的な人工林にするのが適当であるというのが現在のところの環境認識である。

 

 平野でも、「田畑は作らない」などということはなく、自然の恵みを受けて生活を維持するためにはコメも作らなければならないし、山からは材木や紙を得る必要があるのだ。

 

(2008年1月22日執筆)