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 日本は特別な国である。そのことについて日本人は誇りに感じて良いと思っている。どの民族も誇るべきところがあり、日本や日本人もまたその一つだからだ。

 

 こんなに素晴らしい国土はない。四面を海に囲まれ、かつては敵の侵略を防いでくれ、現在では温暖化の影響を緩和してくれる。なにしろ、南方からの二つの大きな海流で常に沿岸の海水が更新されているし、北方からの海流もある。

 

 それに列島の中央には高い山脈があり、雲を遮り雨を降らせる。それがまた水田に水を与え、大きな自然の恵みを日本人に与えてくれる。

 

 日本には資源がないと言うが、それは石油や鉄鉱石などの工業資源であって、快適な気温や風や雨のような自然の資源にこれほど恵まれた国はない。

 

 日本人も優れている。一つには歴史的にほとんど負けたことがないということだ。平安時代までの貴族の時代、江戸時代までの武士の時代、そして日清、日露戦争、それに戦後の近代化という経済の戦い・・・そのいずれにも勝ってきた。

 

 一つだけ、国民への情報を閉ざして軍と官僚だけで指導した太平洋戦争が誤算だったが、一つぐらいは仕方がない。それで民族の誇りが消えるわけではない。でも、情報の締め付けだけは警戒した方が良いだろう。

 

 日本の文化はまた類を見ないほど優れている。謙虚で節約、お金を蔑み、知恵を尊ぶ。犯罪は少なく、穏やかである。相手を思いやる心、敗者をいたわる気持ち・・いずれも日本人が本来、もっているものだ。

 

 かつて海外の人と接してきた日本の武士は、その礼儀正しさで常に国際的に尊敬されてきた。また幕末には近代科学の習得ということでも多くのヨーロッパ人を驚かせた。

 

 それに、なんと言っても日本には、礼節、恩義、誠実などの立派な概念がある。英語には「恩」という単語すらない。だから英語圏の文化が劣っていると言うのではない。彼らは彼らの文化があり、日本には別の文化があるということだ。

 

 でも、世界でも日本人と類似のメンタリティーを持ち、誠実さでは日本人に勝るとも劣らぬ人もいる。その一人がインド独立の父、マハトマ・ガンジーであり、もう一人が同じく東京裁判の判事を務めたラダ・ビノード・パール博士である。

 

 ガンジーは非暴力主義を貫き、インドをイギリスの圧政から解き放った。ガンジーが独立を目指している頃、イギリス軍は無抵抗のインド人に向かって一斉射撃を行ったりしていた。

 

 それでもガンジーは自らの信念を貫き、「マンハッタンの近代工業がもたらすものに尻尾を振るより、糸車を回して紡いでも独立するのだ」という意志を体で示した。その写真が冒頭に掲げたものである。

 

 気高い魂だ。このガンジーの魂はパール博士にも受け継がれ・・・と言ってもガンジーとパール博士は19才しか違わないが・・・日本人もその魂に大きな影響を受けた。

 

 翻って、現代の日本人は、ガンジーやパール博士が持っていたような強烈な愛国心、正義を愛する心、そして誠実さを持っているだろうか? 私はなんとなくだがお金の為にアメリカやヨーロッパに尻尾を振っているように見える。

 

 たとえ石油を失っても、いや、どうせ石油はあと50年も持たないのだが、日本の製品を買ってくれなくても、日本人は日本の国土でやっていける。

 

 日本人が守るべきはお金ではなく、モノでもなく、日本人の魂だからだ。ものを欲しがり、あふれるものに挟まれ、ダイオキシンやゴミ、そして温暖化の幻想に怯えている。

 

 ガンジーに習うことはそれだけではない。彼は「私は指導者だから偉い。だから裕福な生活をするのだ」ということもしなかった。質素な田舎の家で山羊と糸車を相手に生活をしながら国民を指導した。

 

 私はたとえ指導者でも自分にできないことは人に勧めてはいけないし、まして政治家ができないのに国民にそれを命じるなどとんでもないことと思う。

 

日本列島と日本人は実に素晴らしいが、私は時にガンジーやパール博士の人格に触れた方が良いのではないか。