時々、中学生からメールをもらったり、総合学習の一環と思うけれど、何人かの中学生が、大学に来て私に質問をする。そんな時、私は大学の講義や博士課程の講義より、ずっと緊張する。

 

 それは、中学生という年齢の純粋さだ。

 

「この人たちに間違ったことを言ってはいけない。」という強い気持ちが自分の中に沸いてくる。絶対に正しいことだけ・・・でも自分がこの中学生に正しいことを教えられるだろうか?と不安になる。

 

 しばらく、中学生講座というものを書いてみたい。

 

 それは中学生が読むと言うことではなく、私自身の心を洗うのが第一目的である。本当に私は中学生に話をしても大丈夫で正しいことを平易に言っているだろうか?本当に私は判っているだろうか?と反省しながら書きたいと思う。

 

 まずバイオエタノールから始めたい。それはある中学生が5人、私の部屋に来られて4つの質問をしたからだ。良い質問だったし、中学生が説明を聞きメモを取っている態度も実に立派だった。・・・私にもあんな純真な時代が・・・と思ったものである。

 

 第1の質問は次のようなものだった。

「先生、バイオエタノールというのはどういうものですか?」

 

 私はどこから話をしようかと考えて次のように答えた。

 

「バイオエタノールというのは人類の歴史という点では、新しい考え方のものだ。これまで人間は、パンとかご飯のような食糧と、薪や石炭のような燃料とは区別していた。でも、それを一緒にしようというのがバイオエタノールだ。」

 

・・・これで良いかな?悲観的すぎないかな?本当の事実かな?と思いながら話を続けた。

 

「バイオエタノール計画というのは、サトウキビ、トウモロコシ、そして木材などから化学や生物の反応を利用して、自動車のガソリンに混ぜるエタノールを作るという計画なのだ。

 

 サトウキビも木材も同じような植物に見えるかも知れないが、ずいぶん違う。サトウキビからとれる砂糖は“糖”だし、トウモロコシは穀類だから「デンプン」、そして木材は「セルローズ」を主成分にしている。

 

 私たちが食べた感じを思い出してもらうと良いけれど、砂糖は甘いし消化も良い。お米や麦も美味しいけれど少しお腹にたまる感じだね。それから木材や雑草は食べることが出来ない。それは糖、デンプン(穀類)、セルローズ(草木)はそれぞれ化学構造が違うからだよ。

 

 詳しいことは少し難しいので今日は話すことが出来ないけれど、3つの種類があると言うことは覚えておいた方が良い。実際にもサトウキビからエタノールにするときには一回の反応で良いし、トウモロコシになると二回反応しなければならない。でも、いずれも生物的に反応させることが出来る。

 

 でも木材と言うことになると、穏やかな反応で分解する方法はまだ発見されていないので、水酸化ナトリウムのような強力な薬品を使って最初に分解しなければならないし、そうすると使った水酸化ナトリウムを中和することになるからやっかいなんだ。

 

 将来は出来るようになると思うし、今でも研究がされているけれど、木材や雑草からエタノールを作ることができるようになるのはかなり先のことだろうね。だからバイオエタノールというと、トウモロコシかサトウキビを使うと思って良い。

 

そしてトウモロコシといっても食べられない葉や茎は木材と同じようなものだから、使えるのは私たちが食べるあの実の部分なのだ。」

 

私は少し心配になって「わかる?」と聞いてみたが、全員がうなずいた。一人は少し眠たそうな顔をしていたけれど、他の中学生はみんな目を輝かせていた。

 

つづく