壺井栄原作、木下恵介監督、高峰秀子主演、「二十四の瞳」を思い起こす。大人が戦争をしていても子供に「鬼畜米英」と教えなくても良いだろう。「戦争しているから大変だ」という事はよいが、子供は戦争が終わっても人生がある。
小学校で「環境が大切だ」と教えるのは良いだろう。でも「環境を守るために紙のリサイクル」はウソだ。大人がもうけたいからといって子供にウソをついてはいけない。
このシリーズは「環境問題で子供にウソを教えないで」というもので、学校の先生方の心に訴えたい。具体的な数字や根拠はすでに「環境問題はなぜウソがまかり通るのか(洋泉社)」やこのホームページに載せているので、ここではダブらないために詳細には記載していない。
第一回は紙のリサイクル。大学生になって「紙のリサイクルは環境を破壊している」という事実を知って「私の今までの努力はなんだったのか?」とショックを受ける学生が多いからである。
間違いの第一は、「日本の紙は森林の破壊と無関係である」ということだ。紙の原料となるチップやパルプは外国から輸入される。日本産の樹木も一部は使われるがその比率は約10%過ぎない。紙の自給率は10%である。
日本が紙の原料を輸入している先は、カナダ、オーストラリア、北欧など先進国と、紙のメーカーなどが個別に契約している世界の森林である。この中には森林の破壊で問題になっているアマゾンやその他の熱帯雨林などは含まれていない。
そして先進国の森林はここ10年、数%ではあるが増え続けている。スウェーデンの森林組合では森林の利用率が低く、年間9000万立方メートルが育つのに2000万立方メートルを捨てていると発表している。
【先生方への第一のメッセージ】
決して、子供たちに「森林を保護するために紙をリサイクルしよう」と教えないでください!
私はこの現象を、「足から血が出ているのに、手に包帯を巻くようなものだ」と言って警告してきた。紙のリサイクルは森林保護とは関係が無いのにそんなことを続けているから、南方の森林は急速に破壊されている。足からの血を止めるためには足に包帯を巻く必要がある。それも急いで!
第二に、紙のリサイクルはよけいに石油・石炭を使うことだ。このこともすでに何回かさまざまな人から指摘はあるが、そのはっきりした証拠が製紙会社からでてきた。2007年4月に公にされた次の報道である。
「日本製紙は古紙100%の再生紙の販売を9月をめどに止める。古紙リサイクルには石油、石炭など化石燃料が大量に必要なため。古紙配合率を70%に引き下げると、化石燃料使用量が10%程度減る。」
リサイクル紙を製造するのに、樹木からの紙より資源をよけいに使うので製造を中止するという報道だ。紙のリサイクルはそのほかにも製紙会社にメリットがあるのにこのような発表が行われるようになった。
この計算の中にはまだ「リサイクル紙を集める為の資源」は含まれていない。製紙会社の発表としては正しいが国民から見ると収集の為に使った資源もいれなければならない。
ペットボトルなどでは収集に3倍程度の資源を使うから、紙のリサイクルは樹木の利用よりはるかに資源を多く使う、ということになる。
【先生方への第二のメッセージ】
決して、子供たちに「紙をリサイクルすると資源の節約になる」と教えないでください!
でも、なんと言うことだろう。これまで子供に間違いを教えてきた罪をどう償えばよいのだろうか?
さらに紙のリサイクルの本質を考えてみたい。
紙というのは太陽のエネルギーでできる樹木を利用してできるものだ。そういう意味では、太陽電池、風力発電(風は太陽のエネルギーの変形したものだから)、バイオマスなどと同じく、自然からの贈り物である。
だから基本的には石油石炭を使って紙をリサイクルするより、育った樹木を使った方が環境に良い。それは当然である。でも、仮に紙の原料を採るために森林を過度に伐採し、それが森林破壊につながっていたり、紙をリサイクルするのにほとんど石油を使わないなら、紙のリサイクルも環境改善の手段になるかも知れない。
でも現実は、全く反対なのである。紙を採る森林は十分に管理されて増える傾向にあり、紙のリサイクルには石油を大量に使う。それをなぜ、先生は子供にウソを教えるのだろうか?
紙のリサイクルではもうける人たちもいる。それは私の本に詳述してあるので繰り返さないが、大人の世界には大人の世界の理屈があっても良いが、それを子供たちまで及ばさないで欲しい。
心ある日本の先生方。是非、明日から子供たちに紙のリサイクルを勧めないで欲しい。たとえ文部省の指導にあっても拒否して欲しい。明日の日本の為に。
つづく