-ルメー容疑者-
日本の新聞やテレビがいつからか、アメリカの9.11事件の作戦を指揮したといわれるビンラディン氏を「ビンラディン容疑者」と呼ぶようになった。NHKと朝日新聞の戦いではないが、マスコミは政府とは独立だから、政府の指示や圧力があったわけではなく、マスコミ独自の判断だろう。それも一斉に容疑者と言い出したということはマスコミ間で協定があったに相違ない。
(ビンラディン氏)
ビンラディン氏は容疑者と呼ばれるような存在だろうか?ビンラディン氏は「我々はアメリカと戦争をしている」と宣言している。アメリカのブッシュ大統領もまた「テロとの戦いに負けるな」と国民を叱咤激励している。そしてアフガニスタン、イラクに軍隊を送って戦争を行い、占領した。
アメリカの戦争の相手はアフガニスタン国ではない。ビンラディン氏である。なぜならアフガニスタンはアメリカを攻撃していないし、イラクも同じである。だから、9.11戦争はビンラディン氏とアメリカ合衆国の戦いである。
ところでマスコミがビンラディン氏を容疑者と呼ぶ理由は「罪もない人たちを殺した」ということである。つまり戦争においても敵国の罪のない人を殺すのは「犯罪」ということになる。確かにニュルンベルグや東京裁判でも戦犯として処刑されている。
日本のマスコミはもう、忘れてしまったのだろうか・・・哀しいこのことを・・・
太平洋戦争末期、それは戦争の終わる年になった1945年のことだった。サイパン島を占領したアメリカ軍は直ちに首都東京を爆撃する作戦を立て、その指揮にカーチス・E・ルメー空軍将校を当てた。
(東京大空襲を指揮したカーチス・E・ルメー容疑者)
カーチス・E・ルメーは東京を空襲するに当たって、可能な限り非戦闘員である女・子どもを大量に殺す作戦を立てることにした。女・子どもは爆弾におびえる。だから、東京の町を空襲するときには第一波は「脅し」を目的とした爆弾を投下し、それで東京の市街地の外にいる女・子どもも内へと集める作戦を採用した。
この爆撃計画にもとづいてアメリカ軍の第一波は東京の市街の外側を爆撃する。そうすると市民は東京の真ん中に集まるだろう。それを見計らって第二波を出す。第二波は人間を殺すのが目的だから、焼夷弾を積み、楕円形に爆撃されて中央に集まっている市民の上に落として一気に焼死させようという作戦である。
すでに日本の空軍力はすっかり落ちていたので、B29はほぼ無傷で東京上空に到達し、第一派、第二波の爆撃を敢行した。大虐殺は成功し、犠牲者は10万人に上った。10万人と言えばただの数字だが、その中には人生の夢がいっぱいだった子ども、昨日まで一所懸命になって勉強していた子どもたちもいた。
この作戦を9.11で言えば、まずニューヨークの周りに航空機を落下させて逃げまどう人が貿易センタービルに集まる。そのころを狙って今度は貿易センタービルに航空機を突入させる作戦と同じだ。
標的は同じく無辜の市民である。そしてアメリカは罪もない人たちを10万人も殺したのだ。9.11でアメリカがセンチメンタルになっているのを報道するマスコミは過去を忘れたのだろうか?
下の写真は広島の原子爆弾で爆死した中学校1年生、佐々木一彦君である。申し訳ない。凛々しい少年を大人が殺してしまった。終戦直前、アメリカは日本に進軍する兵士の犠牲を少しでも少なくするために日本の降伏を迫った。
軍人は死ぬために戦う。どうせ人殺し集団だから自分が死んでもそれは仕方がない。でも佐々木君は違う。戦時服を着ているが民間人である。兵士の犠牲を少なくするために原子爆弾を落として少年を殺害する。トルーマン大統領はトルーマン容疑者である。
(佐々木一彦君。中学1年生。爆死)
佐々木少年は爆心地にいて即死した。でも爆心地から800mの所にあった国民学校で被爆した多くの児童は地獄の苦しみの中を死んでいった。苦しかっただろう、痛かっただろう、すまないことをした。広島の犠牲者も10万人。東京大空襲と会わせて20万人である。それに対して9.11は4,000人だ。子どもはいない。
それでもトルーマン容疑者もルメー容疑者も捕まらなかった。それどころか、カーチス・E・ルメー容疑者は1964年に日本の天皇陛下から勲一等旭日大綬章を受賞した。受賞理由はなにか書いてあったが私は読みたくない。明らかにルメーの容疑は「日本人の大量殺戮」だからである。
戦争が総力戦になったのは第二次世界大戦からだった。ナチスはユダヤ人を大量に殺害し、日本軍は東アジアでマレーにいる中国人を殺害したと言われる。そしてアメリカやイギリスはヨーロッパ戦線でドイツの都市を無差別爆撃し、日本では東京大空襲、地方都市の爆撃、そして2発の原子爆弾を落とした。いずれも無辜の市民の大領虐殺である。
60年前の戦争がすっかり総力戦になり、戦いの相手の国にいる人間は兵士であれ、非戦闘員であれ、子どもであれ、敵国軍隊が殺害する権利があるなら、ビンラディン氏は容疑者ではない。日本のマスコミは9.11の追悼番組を組み、ビンラディン氏を容疑者と言う。それなら同時にルメーの叙勲取り消しと逮捕を要求するべきである。ルメーはすでに他界しているが、それでも逮捕状を出すべきである。
(おわり)