最近、世の中が急激に変化するので、報道を見ているとビックリすることが多い。軽い話を3回ばかりアップする。今回はその(1)。
野球というスポーツは日本人にあうのだろう。プロ野球、都市対抗野球、甲子園、そして素人の早朝野球まで、野球はすっかり生活の中にとけ込んできた。写真はかつてのパリーグ・西鉄球団で「神様、仏様、稲尾様」と呼ばれた鉄腕・稲尾投手の写真である。
そんな日本のプロ野球が、2004年、ファンには唐突に感じられたが、窮地に追い込まれた。パリーグの近鉄球団経営が破綻したので、来シーズンから5球団になると報道された。
プロ野球機構の偉い人も大きな赤字でもあり、回復の見込みがないから仕方がないと言っていた。みんなが諦めかけた頃、それまでほとんど知られていなかった「ライブドアの堀江社長」という人物が近鉄の球場に登場して事態は一変した。
その後、紆余曲折があったが、最終的にはライブドアと同じ業種の「楽天」という会社が近鉄球団を買い取り、仙台に球場を作って経営を始めることになった。
そして、プロ野球球団機構は新球団設立を申請してきたライブドアと楽天の「審査」を開始した。その時、私はひっくり返るほど驚いたのだった。
「審査」とは申請してきた会社の財務状態、経営状態を調べるのが目的だと言われ、その理由は、
「プロ野球は赤字だから親会社がしっかりしていないと、赤字の補填ができない。」
と言うことだった。
赤字の補填!?ということは、自分たちで稼いでいないの??
それじゃ、日本のプロ野球がプロではない!?
「プロ」というのは、自分に備わった専門的な力を社会に提供し、その報酬として社会から収入を得るタイプの職業を指すことが多い。一番、「プロ」らしいのはお医者さんで、専門的な知識を持っているので、患者さんを助けることができる。そして、その対価として医療費をもらう。
このように「プロ」には特徴がある。一つは専門的力が普通の人に比べて抜きんでていること、国家資格などの何らかの資格を持っていること、自分の仕事でメリットを受ける人が特定の人ではないこと、などである。
大学教授もややプロに近く、専門的の学問に優れ、博士号を持ち、そして学生という不特定の人を相手に教育をする。でも社会はあまり大学教授の講義に感激してくれないので、給料は安い。でもこれは仕方がない。もし私たちがもっと面白い講義ができ、抽選でなければ教室に入れないとなれば給料も少しはあがるだろう。
だから、プロとして大切なことは野球選手も、医師も教授も、常に研鑽を積み、社会から「さすが」と思われていなければならない。もちろん「ダメ医師」「ダメ教授」という人はいるが、多くのプロは立派である。
「プロ野球」という看板を掛けているぐらいだから、そこでプレーしている人はプロのはずである。野球において一般の人より格段に優れた技を持ち、それを提供して社会から報酬を得る。どの程度の報酬を得られるかは社会がどの程度プレーを見て感激し、お金を支払ってくれるかで決まる。
だからプロの集団に「赤字」はないのが原理原則だ。収入の方が決まっているわけではなく、その腕によって収入が決まるからである。年俸1000万円程度の価値のプレーしかできない選手は1億円を要求することはできないから必然的に黒字になる。
ところが日本のプロ野球の球団は軒並み、赤字だそうだ。つまりプロ野球の選手は自分が見せる野球より高い年俸を取っているのだ。それではプロではなくて、普通のサラリーマンだ。いや失礼、現在のサラリーマンは会社の経営が苦しければベースアップを求めない。そのくらいの仁義はある。
今のプロ野球の選手は自分たちを実力以上に偉いと思っているらしい。プレーはスローだし、態度は威張っている。お客さんが来ているのに投げた試合をしたりする。だから球場が満員になることは少ない。
プロ野球が本当にプロなら、近鉄球団が赤字になるはずはないばかりか、むしろ「近鉄さん、本業の鉄道経営が苦しいなら、私たちが野球で稼ぎますから」と言うぐらいでないとプロとは言わない。
日本のプロ野球はプロではなかった。アマチュアだった!
サラリーマンの世界でも見ることができないほどの旧式のアマチュアだった。だから日本のプロ野球はチーム独自の名前がつかず、スポンサーの名前がついている。
昔からのプロ野球のファンである私は、その日から、プロ野球を見ても何となく白けて熱中できない。私の心の中に「これがプロ野球と思うのは自分の幻想だ」というささやきが聞こえてくる。
日本にも立派なアマチュア野球がある。大きな会社が野球チームを抱えて、都市対抗野球というのをする。アマチュアだから堂々と親会社のお世話になっているし、選手の態度も謙虚だ。そして都市対抗の野球選手は野球の他に仕事をしている。偉い!
日本のプロ野球も赤バットの川上、鉄腕・稲尾の時代はプロだった。選手は控え目で野球好きだった。契約金がどのぐらいだということもあまり話題に乗らず、プレーそのものにファンの興味も集中していた。だから都市対抗野球とは厳然と違っていたのだ。
2004年、プロ野球が危機に瀕したとき、ヤクルトの古田選手をはじめとした選手の行動は立派だった。赤字経営なのに偉そうな口を聞く経営陣より数段、上品だった。
そして選手会は経営陣の圧力を跳ね返すためにストライキを構えた。日本社会はそれを支持したが、私はもう一歩、踏み込んで貰いたかった。
【提案】
この際、プロ野球の選手は赤字経営のプロ野球機構から脱退し、独立することを勧める。もともと「プロ」というのはプロ自体が独立しているものだ。近鉄の選手が集まり、野球場の世話や切符を売ってくれる人を雇ってたら良かった。今からでも遅くはない。もし日本のプロ野球の選手の力がプロなら世話をしてくれる人もいるはずだ。
おわり