日本にはプロ野球というものはなかった?
パ・リーグ解体まで及んだ2004年の日本のプロ野球界。ヤクルトの古田とプロ野球経営陣の力の差が歴然とした2004年。この騒動は次の記事で終わった。
「プロ野球は2日、都内のホテルで12球団の代表者が出席する実行委員会、引き続きオーナー会議を開き、パ・リーグへの新規加盟を申請していた情報技術(IT)関連企業のライブドアと楽天について最終審査を行い、楽天の参入が正式に承認された。これにより、1954年にパ・リーグに新規参入した高橋ユニオンズ以来、半世紀ぶりに新しいプロ野球チームが宮城県・仙台市に誕生することになった。(スポーツナビ、2004年11月2日) 」
さまざまなことがあった・・・
「たかが選手が何を言うか!」(渡辺オーナー)
「もしストをしたら選手に賠償を請求する」(オーナー会議)
「迷惑かけるのはわれわれなのに・・・」とストの前に涙を流した古田選手会長
私は昔、巨人ファンだったので、古田に良いところで痛打を浴びたり、憎らしいほどのリードで巨人軍が翻弄されているのを見て、実はそれほど古田を好きではなかった。でも2004年、私は古田のファンになった。多くの人が「古田はあんなに立派な人物だったのか!」と驚き、そしてファンになっただろう。
試合をし、交渉をし、オーナーたちから罵倒され、それでも感情をほとんど顔に出さないし、その言動も紳士的だった。それから見ると・・・(私は言いたくない)
ところでこの騒動で私がはじめて判ったのは、
「日本にはプロ野球はなかったのだ!」
ということだった。
プロがアマと違うところは自分たちの素晴らしいプレーを見せて、そのプレーの価値で観客等から入場料などを獲得し、それを分配して生活する人たちと思っていた。「プロはプロらしく」「さすがプロだ」「俺たちはプロだから」というのはみんなそのことを言っていると信じていた。
そして野球を始め、最近ではサッカー、バレーボールなどもプロリーグができて、私は「プロの試合」を観戦しているとばかり思っていた。野球では「ノンプロ」というのがあり都市対抗野球と呼ばれ、華やかな応援、企業ぐるみの支援はあるけれどプロに比べればもう一つという感触も持っていた。
でもライブドアが算入を希望したとき、オーナー会議は次のような発言をした。発言内容はそのままではなく、その意味をとって編集してある。
「日本のプロ野球は、プロと言うが、現実にはプロではない。彼らのプレーはお粗末で彼らの契約金を支払えるだけの価値はない。だから、球団をもつ会社は別の商売でお金を儲けて、彼らに渡さなければならない。だから、プロ野球に新しく算入する会社は年間数10億円のお金を支払う余裕のあるところに限る」
えっ!!プロというのは「儲ける」ことができないの??会社から給料をもらう??それなら「ノンプロ」とどこが違うの??
そうか、日本にはプロ野球はないのか。いままでプロ野球と呼んでいたのはノンプロだったのか。それなら後ろ盾の会社がいる。確かにプロ野球と称する野球の試合はダラダラしているし、観客へのサービスは貧弱だし、球場に行くとイヤなことがいろいろあって、もう行くか!と思うことすらある。
プロ野球のチームはそれほど人数も多くなく、せいぜい中心的な人たちは1チーム100人程度だ。それなのに、30億円程度の赤字が出るという。一人あたり、3000万円の補助金に相当する。後ろ盾の会社が給料を丸抱えして、プロという名前を使っているだけだ。プロなのにお金を稼げないのだから。
近鉄球団であれば、プロ野球とは言うけれど選手が稼げないので、そのお金を稼いで渡しているのは近鉄電車の運転手だ。運転手はプロだが、選手はアマであることがよくわかる。
プロ野球が「プロ」として自分のプレーを見せて自分でお金を稼ぐためには現在の入場料を10倍程度にするか、選手の年俸を10分の1にするか、それとも関係者をリストラして10分の1の人数でやるかということだろう。それでなければ「プロ」という名前を使うのは一種の詐欺である。
野茂、イチローそして松井がアメリカに渡ったのは、日本の「ノンプロ」野球から、「プロ野球」に変わったことであって、日本からアメリカに渡ったのではないのではないか?
私は古くからプロ野球のファンで多くの選手に憧れ、熱中したものである。でも、その人たちが実はプロではなかったと知ると心の底にある寂しさが湧いてくる。あの憧れの選手、あの選手のプレーも見る価値がなかったのか?あれは幻だったのか?アナウンサーが叫び、観客が歓声を上げるから、あたかも素晴らしいプレー、感動する場面と思ったが、あれはなんだったのだろうか?
そう思うと渡辺オーナーの発言も、あの冷たいオーナー会議のメンバーの顔も理解できる。「お前たちは自分たちの給料も稼げないアマじゃないか。一人前のことを言いたいならまずプロに成ってから言え!」・・・私でもそう言うかも知れない。そしてそれは私たち日本人が野球が嫌いか、あるいは自分が楽しんでいるのにそれに相当する入場料を支払いたくないのかも知れない。
プロ野球の愛好家は自分たちの意思で日本のプロ野球を発展させたいものだ。決して、「どこかの人が稼いでくれた補助金」でプロ野球を守りたくない。ライブドアが参入できなかった理由もわかる。
おわり