- 人工甘味料の怪 -
アスパラガスを栽培している農家の人には悪いのですが、もし少しでも自分の家の回りに野菜を栽培できるところがあれば、アスパラガスを栽培することをお勧めします。
アスパラガスが芽を出し、ちょうど食べ頃になる季節になると、朝、起きてその日に食べるアスパラガスを2, 3本、もいできます。その甘いこと!それも一度、植えると2, 3年目から毎日のように採れて、10年ほども楽しめるのですから最高です。
「甘い」というのは人間にとって「美味しい」という表現とほとんど同じで、私のような左党(酒好きな人)でも、体が疲れた時に甘い物とお茶やコーヒーがあれば「人生、幸せ!」という感覚に浸ることができます。一般的に甘い物が好きな女性にはたまらないでしょう。
ところが甘みの元である「砂糖」は健康に悪いと言われています。砂糖が健康に悪いか?と正面切って聞かれれば、私は「それは砂糖にとって濡れ衣だ」と答えるでしょう。砂糖が肥満の原因になるとか、糖尿病を引き起こすということはありません。単に何でも「行き過ぎると毒」という事です。
私はお酒が好きなので、お酒が行き過ぎになります。また悪いことにお酒は女性と少し関係があるので、お酒におぼれると女性との難しい関係が起こったりします。でも、一日、コップ2杯ぐらいのお酒を飲むのが一番、長生きするということはほぼ確実で、長寿になるものを「毒」ということはできません。
砂糖もそれと同じで、紀元前に活躍したアレキサンダー大王時代から知られ、イギリスに製糖工場ができたのは15世紀です。もともと味覚というのは「人間が栄養として必要なものを見分ける」という五感のひとつですから、「美味しい」と感じるもので健康に悪いものがあるはずがありません。
私は昔から「健康に悪いものだけが好き」という味覚を持っていて、いつも困っています。お酒、辛い物、コーヒー、脂肪の多い牛肉・・・どれも好きなのですが、どれを口にしても近くの人に注意されます。
「武田さん!そんなに飲んでは体に毒よ!」
「だめよ!そんなにお醤油を掛けては!味が付いているんだから!」
「あらーっ!脂肪だらけじゃない!のけて食べなければダメよ!」
という具合です。
なんで、美味しいものは危険なのか?と例によってあまのじゃくな私は専門家に聞いてみると、
「いや、そんなことはありませんよ。人間の味覚は美味しいものが体に良いのです。でも、もしあなたにお金があったらダメです。美味しいものだけを食べることになるので行き過ぎるのです」
と言われます。
これで納得しました。そうか!私はお金持ちだからいけないのか!美味しいものは体に良い、でも江戸時代の人はお金が少なかったから、お祭りの時しか甘い物は食べられなかった。そういえば、小さい頃、誕生日にしかチョコレートを口にできなかったな・・・。
ところで、このことでねじれに捻れたのが「人工甘味料」です。まず、砂糖を採ると肥満になり、行き過ぎると糖尿病になるという間違った噂が流れます。次に、それでも甘い物が食べたいので糖分とは違う「人工甘味料」で人生の満足を得るようにしました。
そうすると「おせっかいな人」が出てきて「人工甘味料は発ガン性があるじゃないか!そんなものを売ってはいけない!」と言い出しました。そこで実に捻れた変なことになってしまったのです。
1) 人間は甘いものを食べたい。
2) 砂糖が甘くて一番、美味しい。
3) でも砂糖を食べると病気になる(本当は間違い)。
4) だから人工甘味料を代わりに使う。
5) 人工甘味料は発ガン性がある(本当は間違い)。
6) だから販売する会社は悪だ!(??)
7) 従って、甘いものを食べるのは禁止だ!(??)
砂糖は健康に悪いと言い、人工甘味料は発ガン性があると言う人、つまり上記の3)と5)を「他人」に言う人にその理由を聞いてみると、
「人生、楽しむ必要なんか無いじゃないか。暗い部屋でひっそりとできるだけ長い間、生きることだけが人間の望みだ」
とおっしゃります。
それはそれで正しい。なんと言っても人間にとって「命」が大切で、「楽しむ」などは意味がない、という考え方はまっとうです。でも、その正反対の人もいます。「人生、太く短く。俺はオレの人生だ」という人もいます。人口が増えれば環境が悪くなるし、偉い人がいれば他の人は偉くなれません。人生、生きているだけが大切ではないと思う人もいるでしょう。
ところで最後に「発ガン性あり」とマスコミが騒いだ人工甘味料は発ガン性が無いことをハッキリさせて、終わりたいと思います。
サッカリン、ズルチン、チクロは3大人工甘味料で、ズルチンが発ガン性などから1968年に全面禁止になりました。チクロが1970年、サッカリンも1973年に使用に制限がつけられました。禁止になった理由は「科学的根拠もなくマスコミが魔女に仕立て上げた」という事です。
そして、そのマスコミは人間の楽しみを奪ってから30年。次のような報道をします。
「人工甘味料サイクラミン酸Na(チクロ)のサル長期経口投与実験で発がん性が確認できなかったとの最終報告が、「TOXICOLOGICAL SCIENCES: 53, 33-39 (2000))」に発表された。チクロはネズミにぼうこうがんを起こすとして1969年に米国、日本等で禁止された。実験は、‘70年より米国国立がん研究所グループが行っていたもので、病理検査は高山昭三・昭和大学客員教授(元国立がんセンター研究所長)が担当した。サル、500mg/kg(体重)投与群:11匹、100mg/kg(体重)投与群:10匹、対象群:16匹で行われ、’94に解剖された。(2000/09/20-新聞-朝日(朝刊))
チクロの騒動を知っている人には実に無責任な報道であると驚きます。さんざん騒ぎ、チクロを製造している人を非難し、罵倒し、購読者を増やし、そして30年後にひっそりと訂正報道をするのです。
人工甘味料は安全です。でも、自然の食物が人間にはもっとも適しているので、甘い物を食べたい時には、私は砂糖を選びます。