― 美大生のための ―
デザインとしての環境論
はじめに
いかに美しい線であっても、それがどれほど新鮮なデザインであっても、それだけで人の心を打つことは難しい。人間は「共感」で感激し、生きる存在であるから、美しい線、新鮮なデザインの中に人の心を打つものが含まれていることが必要である。
すでに著者は環境関係をはじめとして多くの論文を著してきたが、美術大学で行ったデザインとしての環境論の講義内容を整理しまとめようと思い立った。また、これまでの講義や美大生との多くのディスカッションを通じて私自身が得たことも多く、それも併せて表現してみた。
平成18年8月18日 名古屋にて
1. 現代環境論
現代は鋭く「環境」が問われている。その理由の一つは現代がかつてないほどのスピードで過ぎ去ろうとしているからである。自動車で移動し、テレビを楽しみ、エアコンの中で生活する現代はまもなく終わろうとしている。それにも拘わらず、あまりにも速い時代の流れに、我々を取り巻く現代の環境ばかりか、少し前の状態ですら、我々は咀嚼できないでいる。
それ故に現代を見つめることは、我々を取り巻く環境とは何なのか、そして我々は何なのかを理解する切り口になる。
1.1. 現代日本の環境問題
現代の日本の環境問題は地球温暖化から始める。切り口はこれまでとかなり違うので心して取りかかり、少しでも良いデザインを心がけて欲しい。
つづく