ダイオキシンが急性毒性、慢性毒性、発ガン性、そして蓄積性などすべての面で問題が無いこと、むしろ我々が自然に生きるとすると、少量のダイオキシンは必要だということが判りました。でも、ダイオキシンという化合物は我々の子孫に影響はないのでしょうか?

 つまり、現在の我々には影響が無くても、日本の子孫にはダメージがあるかも知れない・・・それを心配している人、心配する余り現在でも危険だというように考えを発展させてしてしまう人もおられるようです。この問題について私は次のように考えています。

 この世のいろいろなことで人間が判っていることはごく僅かです。近代科学はガリレオやニュートンから始まりました。それは17世紀からですから、まだ4世紀、400年にしかなりません。それに対して地球の歴史は46億年。とても勝負にならないのです。

 人間が誕生したのは550万年前。恐竜が2億年以上生存し、新生代になってもっとも強かった鳥類のボスが2000万年ほど続いたのですから、人間も2000万年続くとすると、まだ人類が誕生してから4分の1にしかなっていません。

 これから1500万年も科学や研究を続けていて、今のままが真実として続くとはとても思えません。

 それでも、人間は傲慢な性質を持っていますので、いつでも自分が正しいと思っています。例えば、今から2000年前は「我々は神の教えを受けて真実を知っている」と信じていました。

 また2300年前のギリシャの哲学を読むと「我々はすでにすべてのことを知っている」と言わんばかりです。人間のことですからギリシャばかりではなく、いつも「自分は正しい」「自分はよくわかっている」と思うのです。

 100年前。19世紀にすべてが終わったと思ったアメリカ特許庁長官は、大晦日の演説で
「我々は知るべき事はすべて知った。来世紀(20世紀)は今世紀(19世紀)の成果を実際に応用する時代になるだろう」
と言ったのです。

 その3年後の1903年にライト兄弟が人類初の飛行に成功して航空機時代を開き、1905年にアインシュタインが相対性原理を発表してニュートン力学の修正を行い、量子力学、DNA、パソコンに至るまで20世紀はまったく予想もしなかった世紀になったのです。

 歴史は繰り返す・・・21世紀が開ける時にも「すでに科学はすべて判った。これからは科学をどのように使うか、環境の時代だ」などと言われる浅薄な方もおられたようです。いつの世にもオレは判っている、オレは正しいという人だらけでそれがまた人間のノーテンキで、可愛いところでもあります。

 地球の事など何も判らないのに「地球に優しい」などという言葉を使うこと自体が人間の傲慢さを表しています。そこで第一弾の質問と答えを書いてみます。

「ダイオキシンは1000年後の人類に何を与えるか?」
という質問には私は次のように答えたいと思います。
「人間にとって有益になる可能性、何にも影響のない可能性、決定的な毒物になる可能性、それぞれ33%の確率があります。」

 次に、
「テレビは1000年後の人類に何を与えるか?」
という質問に私は次のように答えたいと思います。
「テレビは人類の頭脳を破壊し、1000年後の人類は10歳から痴呆症で苦しむでしょう」

 また、
「自動車の排気ガスは1000年後の人類に何を与えるか?」
私の答え
「1000年は持ちません。200年後に肺水腫で人類は全滅します。」

 実は、1000年後どころか、100年後もさっぱり判らない。何が良いのか、何が決定的に人類を滅ぼすのか判らないのです。なんといっても今からたった500年前には「病気は悪魔が起こす」と信じられていました。当然「細菌」などの存在が判らなかったのですから当然です。

 1000年前の私が「テレビはどういうものですか?」と聞かれれば「あれは小人が入っているのです」などと言ったでしょう。人間は未来が判らないどころか、現在も判らないのですから、未来を予想することは不可能です。それは結局、私が正しいと考えていることはおそらく間違っているということでもあります。

 以上を頭に入れて、もう一度、
「ダイオキシンは未来の日本人に何をもたらしますか?」
という質問に答えるとすると、
「まったく判りません。でも行動としては指針があります。一つは新しいことを全くやらないこと、もう一つは、今の知識で大丈夫と思うことはやるという指針です。それなら選択できます。」
と答えます。

 つまり私たちの身の回りのもの、テレビ、冷蔵庫、エアコン、自動車、携帯電話、殺虫剤、ペットボトルを容器として使うこと、化粧品・・・どれが人類を滅ぼすものか不明です。わからないものはわからない。テレビから出る電磁波が決定的に人間の将来をつぶすかも知れません。そんなことは判らないのです。

 ダイオキシンが将来、人類にどのような影響を与えるかも判りません。ただ、私は大丈夫と思っています。その理由は「ダイオキシンが昔からある天然品なので、テレビよりは安全だ」ということです。私は「新しい物は危険。注意深く使おう」という考えですから。

 私は科学者ですから新しい物を作ったりしていますが、それだけに新しいものの恐ろしさも知っています。その点ではダイオキシンはまだ安全な方です。

 ダイオキシンが心配な人はテレビを消し、携帯電話はさらに危ないので止めましょう・・・私はこれがダイオキシンを考える基準と思います。危ないのは新しいもの、それは人間の知恵に限りがあるからです。

つづく