このシリーズは、ダイオキシンが有害と言えば視聴率が上がる(マスコミ)」「焼却でダイオキシンが出ると言えば焼却炉を新しくしてくれる(プラントメーカー)」「ダイオキシン騒ぎの間はサンプルの分析で数億円は儲かる(分析メーカー)」「天下り法人ができる(お役人)」という立場はありませんし、逆に「ダイオキシンが安全だと主張して何かで儲けたい」ということでもありません。

 庶民の定義「世間一般の人々。特別な地位・財産などのない普通の人々」

 まず、「ダイオキシンは人工的に作られた化合物」と言われていますので、そこから取りかかります。

 ダイオキシンという化合物は、
1) 有機物があって、
2) 塩素などのハロゲン化合物があり、
3) 300℃から500℃の高温で合成される。
という条件で作り出されます。

 人工的にこのような条件になるのは「焼却炉」です。だから焼却炉でダイオキシンが発生します。また、ハロゲンを含んだ農薬を製造するときにダイオキシンができます。正しく言うとダイオキシンは類似の構造のものが多数あるので「ダイオキシン類」と言いますが、ここではそれも承知の上、ということで単純な呼び方にしています。

 このように「ダイオキシンが人工的に作られる」ということは確かです。発生源は、第一に農薬、第二に焼却炉、第三にいろいろな製造プロセス、そして量は少ないのですが、たき火、タバコ、焼き鳥などでも発生します。

 それではダイオキシンは自然界には存在しないものなのでしょうか?

 第一に、自然界には「有機物」という種類の素材が大量にあります。たとえば、植物、動物などがその典型的なものです。植物の体はセルロースなどの「有機の高分子」や「有機の化合物」でできていますし、動物の体もタンパク質のような有機の高分子と化合物で構成されています。

 石炭は植物の死骸、石油は動物の死骸ですから、これも同じです。

 第二に、塩素などのハロゲンです。いろいろな鉱石などにも含まれていますが、なんといっても量が多いのは海の塩です。海の塩は「塩化ナトリウム(NaCl)」ですので、塩素(Cl)とナトリウム(Na)の化合物で、海に溶けている時には塩素とナトリウムがバラバラで、蒸発させて塩として取り出した時には結合しています。

 第三に、300℃から500℃ぐらいの高温ですが、木材などが燃える時の温度がだいたい300℃から500℃なので、山火事やたき火などがちょうどダイオキシンができる温度になります。

 つまり自然界にはダイオキシンを合成するのに適当な条件が揃っていますから、人間がこの世に存在しない大昔からダイオキシンはあったと推定されます。

 「ダイオキシンは人間が作った物」
というのは誤りです。誤りは直しておきましょう。

 ただ、「人間が作った物」という表現には「現代の科学が」という意味が入っていて、大昔の人間のやっていたことは正しいのでそれは否定しないという感覚の人も多いようです。その点では、大昔から人間は狭い住宅の中で火を使って煮炊きをしていたのですから、毎日のようにダイオキシンに接していたと思います。

 今でこそ、たき火も珍しくなりましたが、昔は家の中で火を使うのは普通の事でした。縦穴住宅に住み、部屋の中央で煮炊きをしていた縄文時代のような頃はもちろん、最近まで、囲炉裏やアイヌではチセという家の中で煮炊きをしていたのです。そこからはダイオキシンが毎日のように出ていました。


ダイオキシン製造装置(囲炉裏)

 実際、普通にものを燃やしてダイオキシンを出さないようにするのは大変です。焼却炉の場合、特殊な構造にしてできるだけ300℃から500℃の温度にならないようにします。そのために膨大な税金が投入されました。

 ところで、ダイオキシンが最初に「意識的、人工的に合成された」のは1872年(ドイツ)です。その頃のドイツは染料工業などを軸として有機合成化学が発展し、その研究の中で作られました。

 つまりもともと天然には存在したのですが、人間が意識的に合成できるようになったのが19世紀だというのが正しい表現です。そして、ダイオキシンが合成できるようになっても、さしたる用途も無かったので、農薬やその他の製品の中に不純物として含まれていたのです。

 1970年、今から30年前に日本国土のダイオキシン濃度が高くなりました。その原因は水田にまいていた農薬の不純物だったのです。つまり、1970年の時点では、
「ダイオキシンは大昔からある化合物だが、最近、水田にダイオキシンを含む農薬を使ったので、ダイオキシンが10倍ぐらいになった」
というのは正しい表現です。

 大昔にはあまり多くなかったダイオキシンが増えたということが、いつも間にか「ダイオキシンは人間が作った・・・」と変わったものと考えられます。

 第一の結論
「ダイオキシンは、自然界に普通に存在する化合物である。」

つづく