― ミサイル発射と靖国の英霊 (3) ―

 

 このシリーズに書いたように、もともと明治政府が軍備を整え、日本が軍国主義に走った原因は、ヨーロッパおよびアメリカの圧力である。吉田松陰が脅威を感じたように19世紀、イギリスは中国にアヘンを売りつけ、中国が麻薬のアヘンを買わないと言って戦争を仕掛けた。

 正義も何も無い時代だった。中国はアヘン戦争に敗れ、国土を割譲し、屈辱的な条約を結んだ。少し経って、日本では薩英戦争、長州での下関戦争が起こり、ヨーロッパの軍艦が日本国土を砲撃した。

 そんな状態の中、日本の独立を守るためにはなにが必要だったのだろうか?凶暴な相手に対して玄関に鍵を掛けず警察も呼ばずに、ただ家族が殺されるのを見ているだけが正しかったのだろうか?

 かくして日本は軍備を整え、日露戦争での日本海海戦に勝って、やっと一息ついたのである。

 その後、後から考えると日本は少し行き過ぎた。なぜ、日本人が行き過ぎたのかはよく考えてみなければならないが、ともかく行き過ぎた。そして日中事変から太平洋戦争に突入したのである。

 でも、「日露戦争は正しかったが、太平洋戦争は間違っていた」ということを言う人はそれほど多くない。「戦争賛成」と言う立場の人は両方ともOKだし、「戦争反対」という人は両方反対である。

 戦争反対の人は日本が軍備を持たなくても独立できたという論拠を示して欲しい。また、当時「専守防衛」などという思想が世界にまったくない「列強の時代」であり、「力の強い国が力の弱い国を占領してなにが悪い!」という時代に、日本の軍隊が守備だけをする可能性があったのかについても回答が欲しい。

 私は日露戦争を回避して日本が独立を守ることはできなかったと思う。そして日露戦争に勝った後、当時の世界の常識に沿って日本の軍隊が他国に出て行ったのも、(その国には大変、申し訳ないことをしたが)やむを得なかったと思う。


  全世界を植民地にして自分たちだけが豊かだったヨーロッパ(赤い国が灰色の国を支配。なぜ、こんな事が許されるのか!なぜ、アジアの人はこの歴史に怒りを感じないのか!)

 アジアの国は当時の日本を非難している。その気持ちも理論も理解できるが、それならなぜ、日本より長い間、アジアの諸国を占領していたヨーロッパやアメリカを迎合し、僅かな期間だけ占領した日本を特別に非難するのだろうか?

 私は日本の軍事占領を正しいとは思わない。でも、力で支配して良いという時代、ある意味では必然的な方向であり、また日本にも誤りはあったが、日本がフィリピンでアメリカを、インドネシアでオランダを、インドシナでフランスを、そして一時的にせよシンガポールなどでイギリスを追い出したことが、その後の独立戦争の時に、アジアの人には役に立ったのも事実である。

 中国も韓国もはげしく日本を批判しているが、なぜ、その前に世界中を植民地にし、中国にアヘンを売りつけたイギリスを批判しないのだろうか? 近いところは攻めて遠いところは親しくするという中国の故事があるからその通りにするというのでは、あまりに誠意がない。

 作戦的に日本を非難しているなら、直接、そう言った方が人間としては良いだろう。
「本当はアメリカやヨーロッパを批判したいが、遠い国なので、特に批判してもメリットはない。だから近くの国を批判しておく」
というなら判る。

 戦前、日本は天皇を中心として国を運営していた。その体制が良いのか悪いのかも一概には言えない。もともと、当時、帝国主義というのは当然の体制で、世界の一部の国にしか今の民主主義にあたる国はなかった。

 世界中で帝国主義が終わった時代に日本だけが帝国主義なら若干、批判されても良いが、少し遅れて出てきた日本が帝国主義だからと言って批判するには当たらない。

 日本は「天皇陛下万歳!」と叫んだ。それも最近、批判する人がいるが、自分が外地で命を捨てる時には、なにか日本を象徴する強い存在が必要である。それが天皇陛下だったのだ。「ニート万歳!」などと叫んで命を祖国に捧げることはできない。価値のある祖国だからこそ命を投げ出す。

 せっぱ詰まっている国にはその国の体制がある。それを余裕のある国から見ておかしいからと言って批判するのは間違っている。当時の日本がなぜせっぱ詰まっていたのか?それは「外国からの脅威」だったからだ。

 その目で、北朝鮮を好意を持って見たい。

つづく