廃棄物貯蔵所から有害なものは流出するか?
なぜ、有害な物が廃棄物貯蔵所からでるのだろうか?まずそれから考えてみたい。
廃棄物貯蔵所から出る毒性物質は大きく分けて3つある。一つは私たちの生活に必要なので毒物であることは判っているけれど便利だから使っているもので、代表的なものに、鉛、ヒ素、水銀、カドミウムなどがある。こんな毒性のあるものは使わない方が良いように思うが、今すぐ止めると自動車は走らない、テレビはダメ、携帯電話は使えない・・・ということになるので、仕方がない。これから数十年かけて少しずつ減っていくだろうが、すぐにはなくならない(消費者が決意をすれば別)。
もう一つは「もともと毒性が無い物を使っていたり、毒性のものとは別になっているが、使っているうちに発生したり、あるいは回収するときに混じる物」だ。使っている内に発生する物としては、昔は「腐った食品」がその典型的なものだったが、最近では「オコゲが発ガン性」「化学製品が分解した物が環境ホルモン」などと複雑になってきて、無数にある。また「農薬を入れるポリ容器」などの代表されるように、もともと毒性のないポリ容器が農薬やトイレの洗浄液というような「必要な毒性物質」と一緒に使うことによって汚染されるものがある。これも数は膨大である。
このようなものは決意をしても、無くすには相当長い時間が必要となる。種類が多く、人間生活と密接に関係しているからである。
最後に、産業で生産の途中で出る有害物質である。現在では「製品は国民の物だが、それを作るのはメーカーの勝手」とされているので、有害物質はメーカーが片づけなければならない。これは一見、まともなように見えるし、「製造者責任」ということも言われている。でもメーカーと一言でいっても自分のところで廃棄物の処理ができるような大きなメーカーばかりではない。むしろ最近では「小さなメーカーやベンチャー」などを奨励しようとしているが、そのようなところは廃棄物までは手が回らない。本当は家庭などからでる「一般廃棄物」と一緒に焼却すると良いのだが、社会的には反対が強い。
このように、「なぜ廃棄物貯蔵所から有毒物が漏れるか?」を考えるときに、「それは我々(市民、消費者)が毒物を使っている、あるいは使っているところから買っている」ということを理解しておく必要がある。
それが判ったところで、次に、「廃棄物に有毒物が入るのは仕方がないが、何とかそれが漏れないように出来ないのか?」ということになる。技術的には単純で、廃棄物を焼却して溶融(固める)してキチンとした管理のもとのしまい込むが最善である。なぜ、それができないのかという理由が2つある。
まず一つは「焼却すると二酸化炭素が出る」という科学的には誤ったことが流布されて焼却がままならない。本来、焼却することによって毒物が除かれるという「事実」が、焼却によって毒物が発生するという反対のことになった。もう一つは、つい最近まで「市の清掃担当者は下等な人だ」として差別されていたのである。今では信じられないが、たとえば50歳くらいの人で清掃に携わっていた人はみんな、差別を実感して育ってきた。「自分たちは立派なことをしている。だけど世間は認めてくれない」という中で黙々とゴミを片付け、汚物を処理していたのである。だから、という訳ではないが、廃棄物処理場でも環境は著しく悪く、お金もでず、キチンと管理は出来なかったのだ。それを突然、市民が環境に目覚め、それまで清掃などに見向きもしなかった学者やインテリが登場して、「廃棄物処理場から毒性物質がでる。なんたることだ!」となった。
私は、「そういうなら、自分で片付けることだ」と言うことにしている。
しかし、責任のなすりあいをしても仕方がない。これまでのことはこれまでとして、これからの事を考えるのが良い。
前提として、「資源というのは汚い」ということをまず認識する。日本にも昔、足尾銅山などがあり、その周辺は鉱毒で大変だった。今でもそれは同じで日本の銅を輸出しているチリの銅鉱山は見渡す限りはげ山で、大気はどんよりと濁っている。私たちは汚い物を地下から掘出して利用しているという事実がまずある。石油、石炭、鉄鉱石、銅などの金属鉱石はみな酷く汚い。日本には鉱山が無いので、鉱山の汚さを忘れている。すべて外国を汚している。
だから、廃棄物貯蔵所を完全に綺麗にすることは不可能で、どうしてもそうしたければ、資源を外国に頼っているように廃棄物の処理を貧乏な国に任せれば解決する。しかししたくない。
ベストの方法は、
1) 分別しない(どのゴミに毒物が含まれているかはわからない)
2) 全て焼却する(有機性の毒物は分解して無毒になり、元素系は焼却すれば分けることができる)
3) 将来のために取っておく
4) 市民で協力して毒性物質の流出を監視して、流出するようならその地方に合わせて対策を練る(開放的な場所なら実質的に問題は無い。閉鎖的な地形では危険なので、その地域から出した方がよいという現実問題にも目を向ける)
5) 技術的にできないことはできない
6) できるだけ毒物を含まない製品に変えていく。
である。
環境とはつくづく難しいと思う。廃棄物貯蔵所からの毒物という一つをとっても、その解決は難しい。でも、環境時代というのはそういう物だろう。環境を汚しても良い、作ればよい、と言う時代より難しいのは当然かも知れない。その代わり、我々は美しく安全な生活を手に入れることができるのだ。
おわり