京都議定書の意味をもう一度考える
今年は4月5月と異常なほど暖かい・・・というより「暑い」と言った方が良いような毎日が続いています。4月6日には山梨県大月市で30.2℃を記録し、同市の観測史上、最も早い夏日となりました。5月の連休はおおむね天気に恵まれ、全国的に気温も高く「地球温暖化」を思わせる気候が続いています。
世界の気温が高くなっているのは間違いないことで、これは体感でも判りますし、多くの観測値がそれを裏付けています。下の図は気象庁が世界の125年間の気温を整理したものですが、今から120年ほど前に比べると1.2℃程度気温が高くなっていることがわかります。
この傾向は日本でも同じで、下の図に示しましたように世界全体とほとんど同じ傾向を示しています。
このように地表の気温が高くなっている原因としては、
1) 太陽活動が盛んになっている
2) 二酸化炭素やメタンなどの「温暖化ガス」の濃度が高くなっている
の二つが考えられています。確かにこのところ100年間は太陽活動が徐々に活発になってきており、そのために地表の温度が上がることも十分、考えなければなりません。また、念のために人類の影響と思われる二酸化炭素などの排出にも注意する必要があるでしょう。
地球の温暖化を少しでも少なくしようということで京都議定書が締結され、今年になって発効しました。もし地表の気温が上昇している原因が二酸化炭素などの温暖化ガスであったとしても、京都議定書ではそれを防ぐことは出来ないのです。
まず温暖化の原因となる気体は二酸化炭素(CO2)だけではないということです。下の円グラフは温暖化がどのようなガスで起こるかが示されていますが、二酸化炭素の他、メタン、一酸化二窒素、フルオロカーボンなどが原因します。そして二酸化炭素は全体の60%に過ぎません。
また世界の二酸化炭素の排出量を国や地域別に整理した円グラフが下の図です。アメリカやヨーロッパの排出量が多いのですが、やはり人口の多い開発途上国や中国もかなりの二酸化炭素を出しています。京都議定書は先進国だけの約束ですから、世界の約60%に当たります。
さらに京都議定書はアメリカが批准しないので、京都議定書の中でさらに60%の国しか参加しないという結果になります。覚えやすいのですが、二酸化炭素は温暖化の原因となるガスの60%、京都議定書に参加している国は世界の二酸化炭素の排出量の60%を出している国、そして京都議定書の発効が60%の参加(厳密には55%ですが、60という数字が続くので暗記するには60とした方が良いと思います。)です。
つまり、0.6×0.6×0.6=0.216がまず基礎的な数値になります。
次にここでは議論が混乱するのであまり詳しくは述べたくないのですが、現在の地球温暖化の原因の一つに太陽活動や地軸の動きがあります。元々地球は人類が二酸化炭素を出していない頃から気温の上下が激しく、恐竜が活躍していた時代は現在より10℃以上も高く、現在の文明は1万年前に急激に温暖化した結果誕生したものです。
地質学的にいろいろな学説がありますが、下に示すように現在は100年前に始まった短期の温暖化の中にあることは確かですので、温暖化ガスの他に元々の気温の上昇を考え、温暖化ガスの影響を60%程度と見ておいた方が良いでしょう。そうすると、先ほどの60が3回出てくるのが、4回になりますので、(0.6)4=0.13です。
そして最後に京都議定書はそれに参加する国に平均として6%の二酸化炭素排出の削減を求めますから、結果的に世界全体で温暖化を避けるための努力の結果、
0.6*0.6*0.6*0.6*0.06=0.00777
つまり0.777%だけ温暖化ガスが減少することになります。ここでも覚えやすいように原因としての数字が666が続いたので、結果は777であると覚えます。著者はそうして細かい数字を覚えます。
地球の気温を人類の活動で大きく変えることはあまり好ましくないと思いますので、京都議定書を守ろうとする精神は大切ですが、京都議定書が現実に役に立たないと言うことも同時に判っている必要があると思います。なぜならば、精神的なものだけではこの世界はわたっていけないからです。
それに加えて現在中国を初めとしてかなり急速に発展している国もあります。その発展の速度は年率5%程度ですし、此まで発展してきたアメリカや日本、そしてヨーロッパの国が発展しつつある国に「君たちは発展しなくて良い」とは言えないので、ことの成り行きとして今後も発展していくでしょう。そうすると、二酸化炭素の排出量という点では40%の国が毎年5%ずつ発展しますから、一年で二酸化炭素の排出量は2%増えることになります。
つまり京都議定書は1990年に対して2010年頃に世界の二酸化炭素の量を0.777%程度減少させようと言うことですが、その間に発展途上国の二酸化炭素排出量が世界全体の排出量を50%も増加させるのですから、これこそ「焼け石に水」という条約であることが判ると思います。
私は政治的にはともかく、科学的にはアメリカが京都議定書に批准しないのはそれなりの意味があると言ってきました。それは現実的に実行の意味がないのに、なぜ国民を苦しめるのかという判断だと思います。また別の見方では、「もともと京都議定書で温暖化を防止しようとはしてないが国内の省エネルギーなどを進める理由になる」という日本的なだまし手法では有効かも知れません。
日本人は元々本音と建て前は使い分けますが、アメリカはそれに比べればストレートな国なので、京都議定書は温暖化を目的に締結するが、その真意は温暖化ではないといってもなかなか国民的には理解できないでしょう。
おわり