ポリ塩化ビニル(塩ビ)から濡れ衣を脱がせてあげたい


 塩ビ(正式にはポリ塩化ビニルというプラスチックの一種)は環境を破壊する代表的な材料とされている。その理由は環境に有害な塩素化合物が発生して、社会にわるい影響を与えると考えられたからである。

 でも、よく調べてみると塩ビから環境に悪いものが発生するという科学的なデータはほとんどない。そして、これほど社会に行き渡っている「常識」で多くの人が「塩ビは環境にわるい」と言っているのに、誰がどのような経緯で塩ビが環境に悪いと言ったかは明確ではない。

 塩ビのもう一つの面は産業全体の資源の使い方だ。

 現代社会は、「アルカリ」を使う。アルカリは化学薬品の一種であるが、工業的には無くてはならぬものである。たとえば用途としては、環境に良いと言われる「石けん」はアルカリがなければできない。そして、人類がアルカリを得る手段は、海の塩や岩塩から電気分解してアルカリを得る方法しかない。しかし塩はアルカリ(ナトリウム)と塩素で出来ているので、アルカリをとれば塩素が製造される。この塩素を処理するにはアルカリが必要だから、アルカリを使って中和すると、何も製造していない状態に戻る。だから、塩素も有効に使用する必要があるが、塩素の用途としては塩ビは特に優れた材料である。

 でも、危険なものはどんなに優れていて、社会に役立つものであっても使うべきではない。

 だから塩ビの問題はやはり「塩ビは有毒か?塩素化合物が有害か?」ということに尽きる。例えば塩ビを焼却したときに出来るダイオキシンが猛毒であると宣伝されたことがあった。しかし、ダイオキシンが有毒では無いことが知られてきた。またダイオキシンの主要な発生源も焼却ではなかった。ともに大きな誤報だったのだ。

 塩ビは多くの用途に使用されている。その点では人類に大きな貢献をしてきた材料だが、それに加えて「難燃性」、つまり燃えにくい性質を持っている。壁紙や建築物に使えば、本来、火事になっていたのに塩ビに救われた例は数限りない。環境問題で塩ビの使用に反対している人でも塩ビのおかげで火災で犠牲者にならないで住んだ人が多いはずだ。なにしろ、日本で一年間に火災で亡くなる方は2,000人を超えるが、この30年間、ダイオキシンで亡くなった方はまだ日本にはおられない。実に6万人と0人の比較である。

 だから、塩ビは「必ず発生する塩素を吸収してくれ」「人類に貢献し」「火災を防ぎ」「毒性も低い」という尊敬すべき材料なのである。