省エネルギーはエネルギー消費を増やす
省エネルギーは一般にエネルギーを節約することが出来る手段と考えられている。しかし、仮に日本全体で10%の省エネルギーを達成したら、その瞬間には電気の使用量が10%減るが、その分だけ各家庭や事務所ではお金があまるので、何か別のものを買う。買うものが洋服であっても、食品であっても、それはすでに「必要なもの」を買った後のはずで、余計なものをさらに買うことには違いはない。もし、本当に省エネルギーをしようとした場合には、それで余った電気代は土の中に埋めなければならない。税金に差し出しても政府が道路を作るし、銀行もただお金を預かっているのではなく、そのお金を企業に貸すから営業が成り立っている。節電したお金を甥にお小遣いとして渡してもそれは「使い手が変わる」だけで環境には無関係である。
また、日本全体の省エネルギーが進むということは、日本の国際競争力を高めるので日本の購買力があがる。国際競争力が高くなれば円が強くなり、それだけ余計に外国のものを買う羽目になる。
この関係を定量化するのは難しいが、おおよその値で考えれば、1割だけ省エネルギーをすると、国内で10%だけ消費が増え、海外のものを10%余計に買うので、2割の物質消費の増加になると考えられる。
省エネルギーにするとエネルギー消費量が増えるという関係は、「効率」でも同じで、基本的には何かの効率をあげると、かえってものの消費が増えるという奇妙な関係がみられる。実は現在、私たちが苦しんでいる「環境」というものそのものが産業革命以来の「効率化」がもたらしたものである。
産業革命初期に糸を紡ぐ速度が1000倍になったが、それによって人の自由な時間が増えたのではなく、人はさらに忙しくなり、糸は1000倍以上作られるようになった。それからすべての産業活動の効率化や省エネルギーは物質とエネルギーの消費量の増大につながったのである。
省エネルギーを研究するのは良いと思うが、それが環境の改善になるという枕詞は慎重に考えた方が良い。まして、省エネルギー以外の環境改善努力は結果的に物質を多く使用することになる場合があるので、十分に注意し、慎重に考えることが大切であると思う。