15 Sn-AgとCuの界面
Cu-Sn の界面では、CuとSnが一定の割合の金属間化合物が生成することが多いことを前節で示したが、はんだ成分が共晶組成のSn-Ag(Sn/3.5Ag)とCuの間の界面では、Sn-Ag , Cu-Snのそれぞれの金属間化合物が共存する。
もっともこの界面ではSn-Agの金属間化合物は極めて僅かに分散して析出するのに対して、Cu-Snの化合物はデンドライト構造、または沈着、あるいは層状となってハッキリとしたある領域を占有する。
先に示したSn-Agの状態図から判るように、共晶組成のSn-Agではε相のAg3Sn 金属間化合物と、0.04%の微量のAgを含むSnの相(ほとんど純粋なSnといっても良い)からなる。この様にSn-Agの共晶組成のはんだの場合にはSnとAgの割合が著しくSn側に偏っているので、ほぼ純粋なSnの中に棒状のAg3Snが分散している。
この分散相は集合してラメラ状になることはない。それは2種の異なった相があるときには一方の相の体積分率が1/πより小さい時には、表面エネルギーを最小にするように分散状態が決定されるからである。(ID 167)
Cu とSn の間はAgの存在とは関係なく、Cu-Snの金属間化合物が生成する。この金属間化合物は最初デンドライト構造で侵入し、次第に層状の金属間化合物に成長する。即ち、η-相のCu6Sn5とε-相のCu3Snである。この金属間化合物の生成の仕方ははんだ付けの方法によって大きく異なり、その生成の仕方がはんだ付けの性能を支配することから多くの研究が行われている。(Id168)
次の図は共晶組成のSn-Agはんだを用いてCuの接合をIRリフロー法でおこなった場合の界面の状態であるが、図の下の方にはCuの相があり、その上にCu6Sn5が層状に生成している。その直ぐ直上にAg3Snの棒状の金属間化合物が観測される。
これに対して、レーザーソルダリング法で行った場合の界面の組織は、IRリフロー法の場合と全く異なる。 Cu界面のCu6Sn5の金属間化合物は層状に成長せず細かく分散した状態であることが判る。明瞭なAg3Snの金属間化合物は観測できない。これはIRリフロー法の場合の冷却速度が 10℃/sec 程度であるのに対して、レーザーソルダリング法の場合にはその1万倍も大きいことが原因と考えられる。(ID 169)
Sn-Ag系のはんだではAg3Snが生成するが全体の組成のうち共晶組成では銀が3.5% と少ないのでAg3Snを確認するのはそれほど容易ではない。しかしCuとの界面で柱状のAg3Snを観測することができる。Photo 151の中央に縦にある針状の化合物がAg3Snである。
Photo 151 柱状のAg3Sn (Lau p.193 upper)
Photo 151の写真は1000倍のものであるが、これを2000倍まで倍率を高めるとに見られるようにCu(写真の黒い部分で右の上の部分)の界面ら針状のCu6Sn5の突起が見られる。
Photo 152 針状のCu6Sn5の突起(Lau p.193 lower)
(キーワード: Sn-Ag、Cu-Sn、名古屋大学 武田邦彦)
Cu-Sn の界面では、CuとSnが一定の割合の金属間化合物が生成することが多いことを前節で示したが、はんだ成分が共晶組成のSn-Ag(Sn/3.5Ag)とCuの間の界面では、Sn-Ag , Cu-Snのそれぞれの金属間化合物が共存する。
もっともこの界面ではSn-Agの金属間化合物は極めて僅かに分散して析出するのに対して、Cu-Snの化合物はデンドライト構造、または沈着、あるいは層状となってハッキリとしたある領域を占有する。
先に示したSn-Agの状態図から判るように、共晶組成のSn-Agではε相のAg3Sn 金属間化合物と、0.04%の微量のAgを含むSnの相(ほとんど純粋なSnといっても良い)からなる。この様にSn-Agの共晶組成のはんだの場合にはSnとAgの割合が著しくSn側に偏っているので、ほぼ純粋なSnの中に棒状のAg3Snが分散している。
この分散相は集合してラメラ状になることはない。それは2種の異なった相があるときには一方の相の体積分率が1/πより小さい時には、表面エネルギーを最小にするように分散状態が決定されるからである。(ID 167)
Cu とSn の間はAgの存在とは関係なく、Cu-Snの金属間化合物が生成する。この金属間化合物は最初デンドライト構造で侵入し、次第に層状の金属間化合物に成長する。即ち、η-相のCu6Sn5とε-相のCu3Snである。この金属間化合物の生成の仕方ははんだ付けの方法によって大きく異なり、その生成の仕方がはんだ付けの性能を支配することから多くの研究が行われている。(Id168)
次の図は共晶組成のSn-Agはんだを用いてCuの接合をIRリフロー法でおこなった場合の界面の状態であるが、図の下の方にはCuの相があり、その上にCu6Sn5が層状に生成している。その直ぐ直上にAg3Snの棒状の金属間化合物が観測される。
これに対して、レーザーソルダリング法で行った場合の界面の組織は、IRリフロー法の場合と全く異なる。 Cu界面のCu6Sn5の金属間化合物は層状に成長せず細かく分散した状態であることが判る。明瞭なAg3Snの金属間化合物は観測できない。これはIRリフロー法の場合の冷却速度が 10℃/sec 程度であるのに対して、レーザーソルダリング法の場合にはその1万倍も大きいことが原因と考えられる。(ID 169)
Sn-Ag系のはんだではAg3Snが生成するが全体の組成のうち共晶組成では銀が3.5% と少ないのでAg3Snを確認するのはそれほど容易ではない。しかしCuとの界面で柱状のAg3Snを観測することができる。Photo 151の中央に縦にある針状の化合物がAg3Snである。

Photo 151の写真は1000倍のものであるが、これを2000倍まで倍率を高めるとに見られるようにCu(写真の黒い部分で右の上の部分)の界面ら針状のCu6Sn5の突起が見られる。

(キーワード: Sn-Ag、Cu-Sn、名古屋大学 武田邦彦)
16へ続く予定