14 Sn-PbとCuの界面
先に述べたようにCuとSn系はんだの界面には2種類の化合物が生成する。一つはCu6sn5(η-phase)であり、もう一つはCu3Sn(ε-phase)である。普通にはんだ付けを行うとCu6Sn5が観測される。溶解過程に於いて、Cu6Sn5の方が溶解速度が速いからである。光学顕微鏡で見るとPhoto 4-8の様にCu6Sn5は厚さ1μm程度のクリーム状の相として観測され、Cu3Snは僅かにパステルブルーに見える。
Photo 4-8 Cu板状のCu6sn5(η-phase)、 Cu3Sn(ε-phase)
はんだという合金はその構造が複雑でしかも33℃以上では結晶構造も不安定でる。そのためCuがはんだの中に相当大きい拡散速度で侵入するし、はんだの構造も変化する。そしてSnとCuの界面で2つの金属間化合物が生成する様子が分かる。
簡単に界面の様子を模式的に著した図をFigure 4-7に示す。
Figure 4-7 ハンダとCuの界面の模式図
このような金属間化合物が問題となるのはその特性があまり良くないことによる。SnとCuの化合物のうちCu6Sn5はその特性や形態、はんだの性能に及ぼす特異な影響などで注意を要する化合物である。脆く、Cu6Sn5の化合物の付近から亀裂を生じる。次のPhoto 4-9は一年以上経ったCu表面のCu6Sn5の化合物の写真である。
Photo 4-9 1年経ったCu板状のSn-Pb
1976年にEddingtonがSAD(selected area diffraction)で観察した界面の構造をPhoto 4-10に示す。
R 4-10 Eddington, J. W., “Practical Electron Microscopy in Materials Science”, (1976) van Nostrand Reinhold, New York
Photo 4-10 SAD(selected area diffraction)による界面観察
熱エージングする事によって組織の変化が見られ、それが組織の理解を深めることができるが、次の2つの写真はPhoto 4-11の写真が熱エージング前、Photo 4-12の写真が110℃で64日熱エージングしたものである。
Photo 4-11 熱エージング前の写真:a=Cu, b=Cu3Sn, c=Cu6sn5, d=Sn
Photo 4-12 熱エージング後 :a=Cu, b=Cu3Sn, c=Cu6Sn5, d=Pb, e=Sn
特にbのCu3Snが成長していることが判る。次の一組の写真(Photo 4-13、Photo 4-14)もSn-37Pbはんだの熱エージング(110℃,64days)前と後のものであり、熱エージングによって組織の粗大化が見られる。
Photo 4-13 熱エージングによる組織の粗大化のエージング前
Photo 4-14 熱エージングによる組織の粗大化(エージング後)
この様にはんだは熱エージングによって組織の粗大化が見られる。これは元々の組織が準安定領域であること、融点としよう温度の差が小さいので、一般的な金属の感覚で考えると非常な高温で使用していることと同様になる。はんだ組織の不安定なことがはんだの性能に様々な影響を与える。
(キーワード: 熱エージング、名古屋大学 武田邦彦)
先に述べたようにCuとSn系はんだの界面には2種類の化合物が生成する。一つはCu6sn5(η-phase)であり、もう一つはCu3Sn(ε-phase)である。普通にはんだ付けを行うとCu6Sn5が観測される。溶解過程に於いて、Cu6Sn5の方が溶解速度が速いからである。光学顕微鏡で見るとPhoto 4-8の様にCu6Sn5は厚さ1μm程度のクリーム状の相として観測され、Cu3Snは僅かにパステルブルーに見える。

はんだという合金はその構造が複雑でしかも33℃以上では結晶構造も不安定でる。そのためCuがはんだの中に相当大きい拡散速度で侵入するし、はんだの構造も変化する。そしてSnとCuの界面で2つの金属間化合物が生成する様子が分かる。
簡単に界面の様子を模式的に著した図をFigure 4-7に示す。

このような金属間化合物が問題となるのはその特性があまり良くないことによる。SnとCuの化合物のうちCu6Sn5はその特性や形態、はんだの性能に及ぼす特異な影響などで注意を要する化合物である。脆く、Cu6Sn5の化合物の付近から亀裂を生じる。次のPhoto 4-9は一年以上経ったCu表面のCu6Sn5の化合物の写真である。

1976年にEddingtonがSAD(selected area diffraction)で観察した界面の構造をPhoto 4-10に示す。
R 4-10 Eddington, J. W., “Practical Electron Microscopy in Materials Science”, (1976) van Nostrand Reinhold, New York

熱エージングする事によって組織の変化が見られ、それが組織の理解を深めることができるが、次の2つの写真はPhoto 4-11の写真が熱エージング前、Photo 4-12の写真が110℃で64日熱エージングしたものである。


特にbのCu3Snが成長していることが判る。次の一組の写真(Photo 4-13、Photo 4-14)もSn-37Pbはんだの熱エージング(110℃,64days)前と後のものであり、熱エージングによって組織の粗大化が見られる。


この様にはんだは熱エージングによって組織の粗大化が見られる。これは元々の組織が準安定領域であること、融点としよう温度の差が小さいので、一般的な金属の感覚で考えると非常な高温で使用していることと同様になる。はんだ組織の不安定なことがはんだの性能に様々な影響を与える。
(キーワード: 熱エージング、名古屋大学 武田邦彦)
15へ続く