10  Sn-58Biのミクロ構造

 Sn-Pbはんだの共晶組成は63Sn-37Pbのところにあるが、SnとPbの比重を補正すると体積比がわかるので顕微鏡写真の割合と一致する。Sn-Pbはんだの場合にはその共晶組成で2つの元素の体積比率がほぼ等しい。その結果Snの相とPbの相とはどちらがマトリックス相であるかは必ずしも明確ではない。ゆっくりと冷却すると図3.2の様な分相状態を形成するし、再結晶すれば滴状に分相しSn相、Pb相が共に滴状になり、マトリックス相と呼べるものはなくなる。

 これに対して現在研究が進んでいる無鉛はんだの多くはSnかまたは相手の元素の比率が高く、そのためどちらかの元素の相がマトリックス相になっている場合が多い。58Bi-42Snの場合は体積比率の差が小さいのでPhoto 101に見られるように「鉛はんだ」と類似の組織が観測される。

Photo 101 58Bi-42Sn a eutectic with similar volume fractions of both phases

 Sn-Bi系において共晶温度から温度を更に下げると、Sn相の中に溶解するBiの溶解度が減少し、Biが析出する。そのためSnがリッチな領域が現れる。Photo 102は共晶組成のBi-An系のはんだを熱エージングしてSnのリッチな相を分相したものであり、Photo 102で黒く見える丸い固まりがSnのリッチな相である。白い色に見えるBiはSnの相の中で連続的に繋がっているのが判る。
 
Photo 102 Bi-Sn Optical micarograph of a Bi-Sn eutectic

 43%Sn-43%Pb-14%Biの“ビスマス系”3元合金の2000倍の顕微鏡写真をPhoto 103に示す。 明るく見えるところが鉛とビスマスの領域である。
 
Photo 103 43%Sn-43%Pb-14%Bi

R 10-1 Hansen, M., and K. Anderko, “Constitution of Binary Alloys”, McGraw-Hill, New York (1958)


(キーワード: Sn-58Bi、ミクロ構造、ビスマス系、名古屋大学 武田邦彦)

11につづく