法律に則ったリサイクル率は?

 

 前回、ペットボトルのリサイクル・マークを信用してリサイクル率を計算して見たら、リサイクル率は「ゼロ」になった。今ではすっかり見なくなった悪徳不動産なら「みかけ」と「実際」が違うことがあるが、現代の社会では珍しいことだ。

 

 そこで、マークに基づいたリサイクル率を計算しても無意味なので、今回は「法律に則ったリサイクル率」で計算してみたいと思う。

 

 循環型社会基本法、容器包装リサイクル法などの法律が整備されてリサイクルが始まった。法律はその法律が目指す目的が書かれている。これは法律を作るときの国民との約束のようなものである。

 

(目的)

第一条 この法律は、容器包装廃棄物の排出の抑制並びにその分別収集及びこれにより得られた分別基準適合物の再商品化を促進するための措置を講ずること等により、一般廃棄物の減量及び再生資源の十分な利用等を通じて、廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保を図り、もって生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 

 容器包装リサイクルのすべての行為はこの目的に合致していなければならないのは当然だろう。そして目的は簡単に言うと次のような事である。

 

1)    廃棄物の適正な処理

2)    資源の有効な利用の確保

3)    生活環境の保全

4)    国民経済の健全な発展

 

いずれも容器包装リサイクルを進めるときに国民に訴えたことと一致している。

 

 そして、その目的を達成する手段としては、

1)    廃棄物発生の抑制

2)    分別回収

3)    再商品化の促進

である。法律的には手段は一応、限定されている。そのままもう一度、使うのはこの法律の手段としては認められていない。

 

 また、中間的な段階として、

1)    一般廃棄物の減量

2)    再生資源の利用

3)    その他

を通じて進めるとのガイドラインが引かれている。

 

 法律の目的はほぼ社会の希望と一致している。忙しい毎日の中でリサイクルしている人にその理由を聞くと「ゴミを減らしたい、ものを大切にしたい」と言われるのだから、その期待に添う法律である必要があるのは言うまでもない。

 

 そして、実際に法律を作れば国民に強制することになるから、ある程度の縛りはいる。それが方法と中間的な段階を定めた理由だろう。「廃棄物発生を抑制する」というのはなにを言っているかわかりにくいが、分別回収と回収したものの再商品化というのはわかりやすい。

 

 分別回収と再商品化は「目的を達成する手段」であるから、それがどんな結果になっても「分別回収と再商品化をすればよい」という事ではない。その行為は法律の目的にそっていなければならないのも当然である。

 

 従って、「廃棄物が減少し、資源の節約になり、環境の保全に役立ち、国民経済が健全化する」という目的にそった分別回収と再商品化だけがこの法律で言うリサイクルであり、これまた当然である。

 

 実際に容器包装リサイクルを実施する前に計画されていたペットボトルのリサイクルや、プラスチック容器のリサイクルの計画が明らかになってきた2000年の少し前に私は「リサイクルは法律の目的や国民の希望に沿っているか」という検討をしてみた。

 

 そうすると、私の計算では、ペットボトルのリサイクルは、ゴミを増やし、資源を浪費し、時間と場所をとり、赤字になる、ということがわかってきた。

 

でも、再検討をすることにした。それに当たっては、容器包装リサイクルの基本になっている法律の目的を一つ一つ、ペットボトルのリサイクルと対比しながら当たってみよう。

 

まず「廃棄物の適正な処理」であるが、容器包装リサイクル法の目的に「廃棄物の減量」というのがないことに注意を払う必要がある。日本国民の大多数は「リサイクルでゴミが減る」と思っているし、政府もそう言ったと受け取っている。

 

でも、実に巧妙で、リサイクル法の目的は「適正は処理」であって「減量」ではない。廃棄物の減量については「一般廃棄物の減量」という中間的なガイドラインが示されているにすぎない。

 

日本のゴミは3種類ある。一つは国土に埋没したり大気中に放出されるゴミで、これは約20億トンある。第二番目が「産業廃棄物」で約4万トン。そして家庭や事務所からの「一般廃棄物」が5000万トンである。

 

そのうち、容器包装リサイクル法が減量しようとしているのは一般廃棄物であって、それができれば「廃棄物の適正な処理」が完了したと読める。これはリサイクルをしてもゴミが減らないことが当初からわかっていたと推察される。

 

一般廃棄物を減らすのは簡単で、ゴミの分類を変えればよい。具体的にはペットボトルをそのまま捨てると一般廃棄物に分類し、分別して捨てると産業廃棄物になるという細則を決めれば「手段の目的化」がはかれる。

 

ゴミの帳簿を付け替えるだけである。私はこんなことをして何になるのだろうと思うが、不思議なことに賛成している人もおられる。

 

次に「資源の有効な利用の確保」という目的である。

 

「資源の有効な利用」というのと「資源の有効な利用の確保」というのが法律的にどのように異なるのか普通の国民には区別がつかない。だからここでは「資源の有効な利用」と解釈したい。

 

現行のペットボトルのリサイクルは資源の有効な利用になっていないので、法律に反している。法律で言う資源とは、資源そのものと解釈するのが妥当で、「ボランティアが消費する資源は資源ではない」「税金で支払われた資源は資源ではない」とは言っていない。

 

 ただ、人的資源は議論がある。私は人間が働いたことによって生じる資源はやはりリサイクルで消費された資源と見ているが、除いた方がよいと言われる人もいる。そこで議論を単純にするために除いてある。

 

すでにデータが公表されていてリサイクルに使う資源の25%(4分の1)が人が使う資源なので、リサイクルに使う資源を25分引いている。

 

直ちに結論。

 

現在のペットボトルのリサイクルは、新しく石油から作るのに対して理論的に3倍以上、実績で8倍程度であるから、法律に則ったリサイクルはされていない。従って、

 

「現在のペットボトルのリサイクルは、容器包装リサイクル法で言うリサイクルではない」。

 

第二の目的が反しているので、第三、第四はあまり整理しなくても良いが、私は第三の目的にも違反していると考えている。

 

 分別回収してそれを台所にしばらく置いておくこと、道ばたに毎日のように分別したゴミがあるのは生活環境の保全ではない。私には汚らしく見える。

 

精神的にも苦痛だ。「今日は何のゴミ」と覚えているのも辛い。これまでの習慣で朝起きると「今日は、あれとあれをしなければ」と仕事のことが頭を占めているし、時には学生のことで悩むこともある。

 

そんな時、「今日はなんのゴミか」という方向にはなかなか頭が回らない。ゴミの仕事が高級とか低級とか言うことではなく、考えるものの種類が人によって違うのである。

 

かつて美術大学の学生のレポートに「朝、起きると最初に考えるのは、今日はなんのゴミの日だったかということです」というのがあり、私はがっかりした。美術大学の学生は精神的に解放されていなければならないが、朝からゴミの種類を考えていたら自由な美的感覚は成長しない。

 

ビジネスマンで出張が多い人も大変だ。ある日にゴミを出し忘れると次には2週間後などになる。夏の生ものの場合、部屋が句作なり、ストレスも増える。

 

普通に考えれば、自分の身の回りが綺麗で、よけいなストレスがなく、町も美しく、そして廃棄物貯蔵所が満杯にならない・・・こんなことを法律が「生活環境の保全」と言っているのだろう。

 

だからペットボトルのリサイクルは法律の三番目の目的にも違反している。

 

第四番目は「経済の健全な発展」である。これはさらに人によって解釈が様々だろう。私は、

1)  同じ行為には同じ報酬

2)  健全な収益

がこの場合、経済的に健全と思う。

 

 同じ行為に同じ報酬というのは、

1)  家庭で分別したり分別集積所に持って行ったりする、

2)  分別集積所から自治体の処理場へ運搬し処理する、

3)  ベールを引き取って洗浄、粉砕する、

という行為はいずれもこの法律を達成しようとしているのだから、同一賃金でなければならない。

 

 現在のペットボトルのリサイクルでは、

1)  家庭で労働している人は、無償で労働し、税金を払う、

2)  自治体の職員は労働すると給与をもらう、

3)  リサイクル工場の人は税金をもらって、給与ももらう、

となっている。

 

もし新しいリサイクル方法が研究され、法律に違反しないリサイクルならこれでも良いかも知れない。でも、資源を節約できず、本当の意味でのゴミを減らすことができないリサイクルでは、少なくとも3)は違法である。国民に損害を与える行為に税金を払うのは違法である。

 

かくして、現行のペットボトルのリサイクルは法律の目的に沿っていない行為だから「違法」である。違法な行為を故意にやっていたら犯罪で、故意でないなら違法ではないことを証明するデータを公表するべきであろう。

 

「合法的なペットボトルのリサイクルは行われていない。従って、リサイクル率はゼロである」

 

 以上のように、リサイクル協会などの公的機関が発表しているリサイクル率は、法律上のリサイクル率ではなく、リサイクル協会などが任意に違法を承知で決めたリサイクル率計算方法だから、私がその数字を使うわけにはいかないことが理解されたと思う。

 

発表されているリサイクル率は28%だが、これは違法の行為に基づく数字だ。法律で定められた計算方法によらなければならない。そして法律の中で記載された計算方法とは、その法律の目的にそって適法に処理されたリサイクルだけに限定される。

 

従って、適法なリサイクルがされていないのだからリサイクル率はゼロである。リサイクル協会が法律を無視して自分に有利な計算をしたような数字を使うべきではない。

 

電力会社が自らの隠蔽を公表し、保険会社が保険金に不払いを白状する時代だ。リサイクルを担当している人が自ら、リサイクル協会に訂正を申し入れて欲しい。

 

つづく