環境ロマンスカーに乗ると窓から景色が見える。時に暗黒の世界から突如として現れる現世であり、時にヨチヨチ歩きの可愛い赤ちゃんである。さまざまな風景が環境ロマンスカーの窓に映る。

 車窓に映る景色の中でも超弩級のものがアンドロメダ大星雲だろう。地球からの距離は230万光年で我が銀河系とは隣同士である。直径が13万光年、中心部にはブラックホールの存在も確認されている。

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 アンドロメダ大星雲は肉眼でも見える。天体望遠鏡を使えば渦巻きは見えないがなんとなくボーっと星雲らしい形が見える。近くにある小さな銀河も見える。

 でもまったく不思議なことだ。地球上から肉眼で見えるアンドロメダ大星雲は「今のアンドロメダ」ではなく、「230万年前のアンドロメダ大星雲」なのである。すでにアンドロメダ大星雲は存在しないかもしれない。でも「今の姿」はまだ230万光年向こうにあるので見えない。

 時間は過ぎる。過去には戻らない。だから私たちは過去を見ることができない。でも、星は逆である。現在の姿は見えない。見えるのは過去の姿だけだ。太陽ですら8分15秒前の姿しか見えないのだ。

 地球に近い恒星で夜空に赤く光るアンタレス。アンドロメダ大星雲に比べれば圧倒的に近いところにあって地球からの距離は600光年である。もしそこまでワープすることができれば、そこから地球を見ると、ガリレオが望遠鏡でこちらを見ているだろう。

 つまり、過去が見えるのである。

 空を見上げ、今見える星の姿は今の姿ではない。過去の姿である。そのうちのいくつかはすでに今は無い。爆発したり、ほかの星に飲み込まれたりしているはずだ。それでも私たちの目には見える。過去の元気な姿が・・・

 そういえば、アンドロメダ大星雲は太陽系のある我々の銀河系の近くにあり、少しずつ接近している。これから30億年も経つと、アンドロメダ大星雲が直径13万光年、我々の銀河が10万光年だが、この2つの銀河が衝突して大混乱になる。

 そこまでは生きていたくないものだ。

 突然の発見により地球への来訪が伝えられることもあれば、きっちりとした周期を持って地球へやってくることもある天体がある。それは彗星と呼ばれている。別名、ほうき星とも呼ばれ、夜空の星の中でも一風変わった形をしている。

 最近ではマックノート彗星(C/2006 P1)の来訪が記憶に新しい。この彗星は2006年8月7日にオーストラリアのロバート・マックノートによって発見された周期を持たない彗星である。白昼においても肉眼で確認できるほどの明るさを持ち、2007年の大彗星とも呼ばれている。日本でも一時期、夕方の空に確認することができたが、南半球の方が観測条件は良かったようだ。

 他にも、周期を持つ彗星としてはテンペル・タットル彗星(55P/Tempel-Tuttle)と呼ばれる歴史ある彗星がある。この彗星は、1865年12月19日から翌年にかけエルンスト・テンペル氏とホレース・タットル氏が発見し、33年ごとに太陽系外から地球に接近する。

 実は、この彗星は、ただ地球へ接近するだけではなく、地球へ流星群という流れ星の雨を置きみやげとして残してゆく。毎年11月14日頃から11月24日頃までしし座を中心に流星の雨を降らせるしし座流星群が、それに当たる。

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(1833年の大出現)

 この流星群は33年周期で大出現を迎え、古くから記録として残されている。しし座流星群の出現に関する最古の記録は902年のもので、スペインなどに記録が残っている。その後も中国や日本、ヨーロッパなどで記録されており、1698年、1799年、1833年、1866年、1966年、1999年、2001年に大出現があった。

 この33年周期というのはテンペル・タットル彗星の周期と同様である。すなわち、このしし座流星群はテンペル・タットル彗星が飛来した軌跡にちょうど地球の軌道が重なって、軌跡を地球が横切った時に、軌跡に残ったテンペル・タットル彗星の塵が大気圏へ突入することで燃えて、流れ星として見えるのである。

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(学生が撮影した2001年11月のしし座流星群の大出現・中心から飛び出しているのが流星(3分間))

 このような宇宙の客人は、実は生命の起源の一つとしても考えられているし、隕石落下による地球の生物種の大絶滅とも深く関連していると思われる。

 まさに、古くから行われてきた我々の住む太陽系の外から地球への物質供給である。

つづく